第34話 華焔の残夢3
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「なァ八戒…」
「なんです?」
文庫本に視線を落としたままのその姿に、息を吐く。
「その無言で責める癖、やめろよな。」
「別に責めてなんてないですよ。」
数ページも読み進められなかったであろう本が、パタンと閉じられる。
「知ってます?やましいところがあるって自覚してると、被害妄想が強くなるそうですよ。」
「……お前の嫌味は率直過ぎンだよ。」
「遠回しに言って気づいてもらえなかったら、悲しいじゃないですか。」
「ハイハイ、悪いのは俺です。」
間髪入れずに返された応えに数瞬、瞬きを忘れる程に。
別に、本人すらもう、気にも留めていないのだろうけれど。
それでもそこに差し挟まれた僅かな感情の動きを感じ取れない程、浅い付き合いではない。
あくまでも遠くにそして
望むべくして毎日顔を突き合わせているワケでもないのだけれど。
「うっかり口が滑りました。軽率でした。」
「だから僕は責めてませんよ。責める資格ないですし。昨日の発言は、軽率でした。すみません。」
「あ?」
「耶昂を、悟浄の子どもじゃないかって言ったことです。」
「ああ、あれね…」
深紅の髪=混血児=自分の子ども。
単純な連想ゲーム、ブラックジョーク。
まあ、自分の子どもではないにせよ正真正銘の混血児ではあったワケで、悪い冗談としても済まされなくなっている感はあるが。
なんにせよそう片付けられる程度に、自分にとってはどうでもいい事だ。
【妖怪と人間の混血児】
【禁忌の子ども】
否応なく自分に一生ついて回るその単語を、全く気にしていないと言えばウソになる。
でも
今は。
ふ、と苦笑が浮かんだのを自覚した瞬間、八戒が不思議そうにひとつ瞬く。
…そう言えばアイツは、昨日の自分の醜態を一体どう思っただろうか。