第34話 華焔の残夢3
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「喧嘩の安売りでもガキのお守りでもないなら、ボーズの仕事ってのは人を救うコトじゃねーの?」
皮肉っぽく言ってくるのに、哂う。
「…坊主に人が救えると、本気で思ってンのか?」
――江流…
神は、誰も救わない。
いつでも死ぬのは自由だし、逃げる事も許される。
坊主だろうが一般人だろうが、人が人に出来るコトなど所詮タカが知れているのだ。
「俺は、誰も救わない。」
「……救えない、の間違いじゃねェの?お前の場合」
「かもな。」
立ち上がってドアの方へと向かうと、微かに甘い匂いが鼻を掠めた。
「三蔵、どこへ?」
「今日の内に、莉炯に他の被害者の事を聞いておく。」
そう告げながら廊下に出ると、途端にバターの匂いが鼻腔というより体全体を包んだ。
何事か談笑していた春炯と莉炯が、振り返ってこちらを見やる。
「……何してんだ、人ン家の台所で…」
オーブンから出したばかりらしい、薄っすら湯気の立つ何かに包丁を向けているのに呆れてそう問えば。
『何って、悟空が帰ってきた時の為にケーキ焼いておいてあげようと思って。ね。』
「はい。三蔵さんも良かったら…」
にこやかに言う莉炯を見つめ返しながらふと、テーブルに置いてある紙が目に留まる。
「………」
手書きの地図だ。
「そしたら私、先に休みます。」
『分かった』とやり取りを終えて、こちらに歩み寄ってくる気配を感じて顔を上げると、眼前にケーキの切れ端が差し出される。
『どう?駆けつけ一切れ』
暫しの逡巡の後、その手首ごと引き寄せて口に運ぶ。
『……美味しい?』
へらりと笑うのから視線を外し、椅子の背を引いた。
「…甘い。」