第34話 華焔の残夢3
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「絶対おかしいです。」
後ろ手に扉を閉めながら言い、三蔵を見据える。
「何がだ」
昨夜と同じく二つしかないベッドの内のひとつに腰掛け、気のない風に見上げてくるのに眉根を寄せた。
「もう夜になるんですよ。」
「日が沈んだら夜だろ。それのどこがおかしい?」
「…その意味不明ならしくないボケは、悟空を心配するあまりと見なしますよ。」
「喧嘩売ってんのか?」
眼鏡をかけ、バサリと新聞を広げた三蔵から返される言葉はこちらの挑発に見合うものだったけれど。
「もう丸一日経とうとしてるんですよ?何かあったとしか思えません。」
文字を追い始めたその正面、すでに悟浄が天井を仰ぐように横たわっているもうひとつのベッドの端に腰掛ける。
「捜しに行かなくて、いいんですか?」
「…どのみち、何日もここに留まってるワケにはいかねェんだろ?」
一定のスピードで文字を読んでいた眼が不意に動きを止め、何事か思案するように細くなる。
「そうだな…じゃあ、お前ら行ってこい。」
「…ってお前は?」
「行かない。」
「三蔵サマ、あーたさァ最近マジに働いてないんでない?」
「俺の仕事は、喧嘩を売り歩く事でもガキのお守りをする事でもないんでな。」
嘲笑交じりに言い放った三蔵を無言で見つめていると、「調べたい事がある」とやっとその手の新聞が折り畳まれた。
「何ですか?それは」
「……気になる事がある。」
煙草の箱を逆さにして新しい1本を取り出して銜えた三蔵が、枕元のビールの空き缶を引き寄せる。
昨夜から灰皿代わりにされているそれにも言いたい事は勿論あるが、今は呑みこむ他ない。
「これまで…指定なんてまどろっこしい方法を取って人間を襲う妖怪の話なんざ、聞いた事がない。」
「………」
確かに、自我を失くした妖怪にとって殺戮など、衝動的に行う悦楽行為に等しい。
なのにあの森の妖怪は計画的にそれを行っているのだ。