第33話 華焔の残夢2
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『ちょ…っと何コレ?』
扉を開けるなり、不快気な声を上げた春炯が部屋を横切って窓を全開にする。
その顔には珍しく、怒気が浮かんでいた。
『煙草は外で吸って!小さい子がいるんだよ?いくら馴染みがなくても、いい大人なんだからそれくらい分かるでしょう!』
「「………」」
向かいの悟浄と顔を見合わせ、どちらからともなく灰皿に煙草を押し付ける。
「ぷっ」と小さく噴き出した莉炯が、慌てて「ごめんなさい」と小さく謝った。
その腕に抱えられた耶昂が、「あうあう」と笑い声のようなものを上げているのに気を取られていると、『悟空と八戒は?』「まだ」という会話が頭上で交わされる。
「…あの、ごめんなさい。私のせいですね…悟空さんが、悪いわけじゃないのに……」
目に見えて表情を曇らせた莉炯に、椅子を引いて立ち上がった悟浄が首を振った。
「悪いのは悟空だって。あれはただの八つ当たり。他人事じゃ、ないんでね。」
「他人事じゃない、って…」
「河に流された経験者は、アイツの大事な誰かさんなの。」
軽い口調に次いで飛んできた視線に、無視を決め込む。
『!』
外の方を向いた春炯を見やった次の瞬間、ドン…と申し訳程度に叩かれた玄関扉が、家主である莉炯の応答なしに開かれた。
『鍵かけてないのっ』
驚いて莉炯を見やった春炯の背後に、一言の断りもなく上がり込んできた男がそそり立つ。
男の後ろに続いて入ってきた幾人かが、狭い戸口を塞ぐように立ちはだかる。
『…どちら様?』
振り向いて、にこりと微笑して尋ねるのに吞まれかけた男が、鋭くその向こうの莉炯を見下ろす。
「莉炯、耶昂を渡してもらおう。…それとも、お前が行くか?」
下卑た笑みと共に伸ばされた手が、パンッと清冽な音を立てて払われる。
『どちら様?』
一言一句違えず繰り返された問いと共に送られた切るような視線に気圧されかけた男が上げた腕が今度は横合いから、無造作に掴み取られる。
「…ウチの女王サマに、気安く触らないでくンない?」
「なっ――なんだ貴様!?」