第33話 華焔の残夢2
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「いらないって言うなら、俺の方じゃん…。」
少しも揺らがない紫暗の眼差しに、ふつっ、と感情がまた揺らめく。
苛立ちと悔しさと、寂しさと、あと――なんだろう。
「耶昂と一緒にいたいならこの町に残れ、なんてさ?それってつまり、俺なんていてもいなくてもいいってコトだろ?」
「…あ、気にしてました?やっぱり?」
「…別にっ。どーせ俺、役立たずだしっ!」
頬を膨らませてそっぽを向くと、くすくすと控えめな笑い声が耳に届く。
ムッとして睨むと、八戒が今度は腹の立たない笑みを浮かべてこちらを見返す。
「役に立つ立たないの問題じゃないと思いますけど。」
「?」
「不必要な相手を側に置いておく程、広い心の持ち主じゃないと思いますよ、三蔵は。少なくとも、僕は、そう考えてます。」
にこりと笑うのを見ながら、考える。
確かに三蔵は、誰かの手を借りなければいけない程弱くない。
なら三蔵にとって、“必要な存在”というのは必ずしも“役に立つ存在”とイコールではないのかもしれない。
今、この距離を許されているという事実をもって、自分が少しでも、三蔵にとって必要な存在であるのだと思いたい。
自分が必要とするくらい大切な誰かに、同じように必要とされるのはきっとこの上なく贅沢で、誇らしいものだから。
「……納得してもらえました?」
「なんか…うまく丸め込まれた感じ。」
「それに悟空にはもう1人いるじゃないですか。無償の愛をくれる人が。」
「むしょーの、愛…?」
「必要とか不必要かなんて関係ない、ただ貴方を見ていてくれる人ですよ。」
肩を竦めて言う八戒に小首を傾げ、ああ、とここ最近感じていた気持ちがすとんと身に落ちる。
「…そっ…か…。そーゆーコトなんだ…」
「…悟空?」
いつでも自分を見ていてくれる、優しい眼差し。
「逆にしたいんだよな。俺が、あげたいの。」
「…はい?」
成程この気持ちには、そーゆー名前が付くのか。
「俺がね、あげたいの。春炯に。むしょーの愛を!」