第33話 華焔の残夢2
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伸ばした手がすんでのところで届かず、舌打って腰を浮かせた時にはすでに、悟空の背が玄関か扉から見えなくなっている。
「僕が追いますから、莉炯さんの方お願いします」
早口に告げた八戒の目は、自分と、春炯を向いていて。
駆け出していくその後姿を見送りながら、目を見合わせる。
「………どーすんの」
『………』
はあ、と珍しく重い息を吐いた春炯が、同じように立ち上がりかけていた椅子に座りなおした。
三蔵を見やったその目が閉じられ、困ったような笑みが微かにその唇に浮かぶ。
その名残を宿した黒めがちの瞳が今度は、自分を見上げてくる。
『少し待つ。…莉炯の方へは私が行くわ。』
言外に、貴方も座ればと促されるのを感じて椅子の背を引く。
「……なんだかなァ…」
銜え煙草で天井を見上げながら髪を掻きあげると紅が指先から、零れ落ちていった。
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「…さて、どうしましょうか…」
これまで走ってきた路地が、十字に交差している手前で足を止める。
三方に伸びた道に順に目を向けるが、目標物を見つけるには至らない。
脇目も降らずに全力疾走しているであろう悟空の現在地はさておき、これ以上莉炯の家から離れてしまう事を懸念する。
急速に濃紺に浸食されつつある視界の中で焦りを感じ始めた時、ドカンともガシャンとも聞こえる大きな音が辺りに響いた。
「………」
次いで先程よりは幾分静かな、ガラガラという音が連なって続く。
騒音=悟空というワケではないが。
この場合、十中八九。
「…こっちかな…?」
苦笑を浮かべたまま、確信に近い思いを胸に音のした方へと、駆け出した。