第33話 華焔の残夢2
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「さっきは、取り乱してごめんなさい。」
そう言って小さく頭を下げた少女が、お茶の入ったカップを勧めてくれる。
通された部屋は、手入れがよく行き届いていた。
華美な装飾品が置かれている訳ではないが、さり気なく飾られた花や、柔らかな色合いで統一された明るい居室。
部屋の中心に置かれた少し大きめのテーブルに悟浄と八戒、三蔵と悟空、そして自分と向かい合う位置に、少女が腰を落ち着ける。
一人暮らし…にしては大分ゆとりある造りの部屋だななどと思っていると、左右斜め前方から幾つかと、そわそわと彷徨っていた正面からの視線がこちらを向いている事に気づく。
『……あ、え…っと莉炯さん、でしたよね?』
首を傾げて問うと、その髪と同じ栗色の瞳に、はにかむような微かな笑みが覗いた。
『あの…貴方はあの子の…?』
「私はあの子の、耶昂の叔母です。」
歯切れの悪い質問の意味を汲んでくれたらしいのに感謝し、続きを待つ。
「耶昂は姉の子どもで…あの……あの子をどこで…?」
「河だよ。」
初めて聞く棘を含んだ声に、ひとつ瞬く。
「箱に入れられて流されてたの!…なんでなんだよ…なんで――」
ゴン、と鈍い音に、莉炯がきゅっと目を瞑った。
食ってかかるように身を乗り出していた悟空の後頭部を掴んだ悟浄が、その額をテーブルに打ちつけたのだ。
「怯えさせてどーすんだ、バカ。」
『ここへ来る途中、ちょっと強面の人達にあの子を渡すように言われたのだけど…何か心当たりとかってある…?』
落ち着いた雰囲気ではあるが、恐らく莉炯は16歳、17かその辺りだろう。
敬語を外した問いかけに、その視線が背後にある扉へと向けられる。
その奥では、耶昂が眠っているはず。
「…耶昂がここにいると…町が……妖怪に襲われるんです。」
「…何故です?」
「ひと月程前からです。東の森に妖怪が住み着いて、人質を要求するようになったんです…妖怪に指定された家から1人、人質を出さないと無差別に殺戮を行うと脅されて…耶昂の前にも…5人が……」
言葉を濁したその顔が俯き、細い肩が強張るのに目を、細めた。