第33話 華焔の残夢2
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「あの…さ、三蔵。」
俯いていた悟空が、遠慮がちに切り出す。
「コイツ、また捨てられるんじゃねェ?」
相手の沈黙をどう取ったのか、パッと上がったその顔が勢い込んで言葉を重ねる。
「だっていらないから捨てられたんだろ?ならさ、返してもまた――「だったらなんだ」
「だから俺が…っ」
「前に言った選択肢以外は全部却下だ。」
最後まで言わせる事なく言い切った三蔵に、引くという言葉を知らない金晴眼がたじろぐように、でも真っ向から向かい合う。
「……あのよ、ここで見つめあってても何の解決にもならねーんじゃねェの?」
「そうですね。まずはこの子の親御さんに会ってみないと。」
『もしかしたら、さっきの人達がさらって捨てたって事もあり得るしね。』
すかさず援護射撃を繰り出した八戒と春炯が、見事なまでに悟空と三蔵、両者から反論を奪い取る。
この辺りが、自分が肉体労働派に振り分けられる所以なのだろう。
とはいえ子猿と一緒くたにされるのは、心外だけれど。
『とりあえず、ね?…悟空。』
「……分かった。」
赤ん坊を抱く腕に力を込めた悟空が、一歩踏み出す。
こちらまで緊張する間を置いて、その拳が扉を叩こうとした、その時。
「あの、家に何か御用ですか…?」
鈴の音のような声に振り返った先に所在なさげに佇んでいたのは、一人の女。
「…あの……?」
と次の瞬間見開かれた明るい色の瞳に何を思う間もなく、華奢な体躯が前へと駆け出す。
「耶昂ッ!」
悟空から奪うように赤ん坊を抱き留めた女が、愛しそうに頬を摺り寄せるのを、眺めながら横目で悟空を見やる。
「………」
女の両目に薄く張った涙をただ見つめる様に、首を掻いた。