第32話 華焔の残夢1
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
抱きあげてくれる腕を求めるように、持ち上げられた小さな手。
指先をたどたどしく動かしながら、自分を見下ろしてくる大人達を見上げていた円らな瞳が、笑うように細められる。
「…前言撤回しなきゃってか?」
どこか乾いたような口調で呟いた悟浄の向こうでは、三蔵が珍しく驚きを露わにしている。
血の色を彷彿とさせる、美しい、深紅の珠玉。
見慣れたそれが、見慣れない…言葉を選ばなければ少しの違和をもたらすのは多分、赤子の日に焼けた事がないであろう白い肌のせいだろうか。
頭髪と、その瞳にある色とが、鮮烈なまでのコントラストを生み出している。
『………』
それでも
衝撃を通り越せばそこに在るのは、ただの小さくて可愛らしい赤ん坊だ。
柔らかそうな頬と、あどけない仕草に見ている内に知らず、頬が緩む。
抱きあげようとしたその時、強めの力で体ごと押しやられる。
『?悟じょ――』
見上げたその横顔に眉根を顰める。
昏い光を宿した眼と、身体じゅうから発される気配に危険を感じたその時――
「錯乱してんじゃねーよ。」
突き放すような、冷ややかな声音。
手首を強く掴まれた悟浄が肩までびくりと揺らし、緩慢な動作で三蔵を見やった。
紫暗の瞳とぶつかった瞬間、憑き物が落ちたようにその長身からこわばりが、解けていく。
ひりつくような緊張感がやがて、四散していった。