第32話 華焔の残夢1
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
傾いてきた陽の方から、少しの冷たさを孕んだ風が吹いてくる。
『………』
不規則に乱れる髪をそのままに、ボンネットに寄りかかるようにして煙草を吸っていた悟浄が、ふいに振り向く。
「何?」
『ううん』
細い眉が片方吊り上がるのを見てとり、すやすやと眠り続ける腕の中の赤子に目を落とす。
『…機嫌直ったかな、と思って。』
「…は?」
『悟空に八つ当たりしてたじゃない。』
応答がないのを不思議に思って顔を上げると、無防備な表情と出くわす。
それはこちらが、驚いてしまう程に。
「…朝っぱらからずっと苛ついてたくせに、自覚ないのか?始末に負えねェな。」
こちらからは見えない三蔵の顔を見て、開かれかけた悟浄の薄い唇が、音を生み出さないままにかたく引き結ばれる。
彼と悟空の言い合いなど、日常茶飯事で。
それこそ食事の数よりも多いのだけれど。
「とにかくうるせーから、あいつに絡むんじゃねェよ。」
傲岸に響く声が、紫煙と共に吐き出される。
「…理由、聞きたい?」
何故か嬉しそうに三蔵と、ついでこちらを見やるのに知らず笑って息を吐く。
『…どうしてもって言うならね。』
「…どうしてもって頼むんならな。」