第32話 華焔の残夢1
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常であれば、自分の味方をしてくれるはずの八戒に柔らかく反対された悟空が、目に見えて勢いを失くして問う。
「僕たちの旅は、この子にとって危険すぎます。」
さもありなん。
一度の直接対決以来、紅孩児からの[質より量]のやり方は幾分収まったが、それでも襲撃が皆無になったわけではない。
おまけに自分含め、春炯以外の全員が売られた喧嘩はとりあえずお買い上げの質なものだから、ささいないざこざは人間妖怪問わず既に日常の一部だ。
「大丈夫。俺が守るから。」
「悟空…」
あっさりとした答えに、八戒が息を吐く。
犬猫を飼うのとはワケが違うのだと言い聞かせても、多分無駄だろう。
言い出したら聞かない性格をよく知っているからか、事の成り行きを見守っていた春炯が車に帰ってくる。
「八戒。次の町までどのくらいだ?」
「6時間くらいですから、着くのは夕方ですね。アクシデントがないとしてですが。」
「これはアクシデントに入るのか?」と視線で示された三蔵の問いに、「この程度のロスなら、別に問題はないですけど…」と八戒が悟空の抱えた赤ん坊を見やる。
「オイオイ、子連れ道中はごめんだぜ?」
『とりあえず抱っこしてみたら?可愛いわよ。』
予防線をやんわりと押し上げられ、漏れそうになる呻きを煙草を銜え直しながらいなせば。
「仕方ないから、次の町までは我慢してやる。」
とガリガリと頭を掻きながら三蔵が、恐らく似たような感情をかみ砕いた。
「町に行けば人に預けるなり、そういう施設に入れるなりできるだろ。」
「………」
紫暗の双眸に見据えられた悟空が、まるでその圧から守るように赤ん坊を抱く手に、力を込める。
「…ガキを誰かに預けるのが嫌だってンなら、一緒にこの町に残れ。好きにしろ。」
『悟空』