第32話 華焔の残夢1
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―――息が、できない
じゃりじゃりとした砂の感触と一緒に口から、鼻からと水が入り込んでくる。
「っ」
ほんの一瞬気を緩めた途端、再び頭まで水に浸かる。
『悟空!』
自分の名を呼ぶ声が大きく響いた直後にやってきた無音状態をもがき、なんとか水面に浮上する。
大きく口を開いて酸素を取り込みながら辺りを見回すと、目的の木箱は以外にも目前に迫っていた。
「――っくしょ」
あぶなっかしく揺れる、木箱。
身体の奥底から湧き上がってくる怒りを振り払うように、力任せにもがく。
絶対に助ける。
そう思った時、ふわんと足元が軽くなった。
見れば、先ほどまで渦を巻くように過ぎていた流れが何か、不純物でも混ぜたようにその動きを鈍くしていく。
『悟空!木箱を、早く!!』
「!」
自分の四方だけが凪いでいるのに気がつくと同時に、その外側を行き過ぎようとしていたそれに手を、伸ばす。
『――…』
ほっ、と目に見えて肩を下した春炯に笑みを返し、方向転換する。
「へへっ」
褒めてもらった記憶はあまり、ないけれど。
『気をつけて』
自分を映して待つ黒曜の眼差しに、急いだ。