第32話 華焔の残夢1
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「これ…」
河沿いギリギリの位置で泥濘に嵌まらないようジープを走らせながら、思わず声を上げる。
濁流の合間を縫って耳に届く、この音は
「…子どもの泣き声、ですよね…?」
悟空が指さしていた物体は、ここまで近づいてみると木でできた箱らしかった。
蓋は付いていないようだが、この位置からではその中までは見えない。
『すれ違う時なら、見えるかも』
悟空と並んでやや身を乗り出していた春炯が、後部シートに手をかけて立ち上がった。
「おい、落ちるなよ。」
最初に目に入ってきたのは、白い布。
その隙間で動く物体を視認した時にはもう、両者の位置は入れ替わっている。
時間にして、ほんの一瞬。
でもこの目には確かに、横たえられた乳児の姿が映った。
恐らく、他4人にしても同様だろう。
「どうします、三ぞ「おい!?」
慌てふためいた悟浄の声に振り替えるより早く響いた、高らかな水音。
驚いてブレーキを踏んで、急停車をかける。
「――…」
無謀にも河を泳ぎだした悟空に、何やら声を張り上げている春炯とを視界に収めて。
「三蔵、いい教育してますね。」
「…褒めてんのか?けなしてんのか?」
頭痛を堪えるように額に右手を添えて俯いた三蔵が、くぐもった声で問うてくるのに、笑う。
「無論前者ですよ。」