第32話 華焔の残夢1
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今日も今日とて向かう西への一路。
向かい風に散る自分の黒髪に時折、紅が混じる。
「いいっ加減にしろよなっ!」
「いい加減にしろよなぁ」
「もー完っ全にアッタマきたっ!」
「もぉ完全にアッタマきたぁ」
川沿いを、その流れとは逆に走行するジープから、同じ台詞が零れ落ちていく。
両の拳を握りしめた悟空がついに立ち上がるのに、顔を背け息を吐いた。
「俺の言うこと、真似すんなってばっ」
「俺の言うこと、真似しちゃいやーん」
煙草の煙と共に吐き出されたやる気のない言葉に震える悟空の背中を見れば、ゆくゆくの顛末が測れるというもので。
隣に坐した三蔵の横顔を見やったのだろう、ハンドルを握る八戒の頭が僅かに動く。
『………』
「三蔵。後ろ放っておいていいんですか?」
「安心しろ。あと5分でケリがつかなかったら、俺が終わらせてやる。」
「…不毛な言い合いを、終わらせるんですよね?」
その右手に握られたS&Wに不安を覚えたらしい八戒の言に、「除草は根からが基本だろ」と応えがあったところで二人の会話から意識を離す。
「ちょっと待った」
「ちょっとだけ待ってぇ」
浅い笑みをこびりつかせた深紅の眼がこちらを見るのと、悟空が体の向きを変えるのはほぼ、同時だった。
「だぁから、茶化すなよ悟浄!マジに待てって。なんか聞こえる。」