第31話 Opposite
夢小説設定
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「…あーあ」
「ヒマだー」とシートに反り返った悟空が、空を仰ぐ。
「…落ちっぞ猿」
「だって身体がきゅーくつなんだもん。」
「まあ確かに、ここ数日刺客の襲来も途絶えて平穏ですねえ」
「ああ毎日せっせと通いつめてたモンがパッタリ来なくなるとなあ。こお、結構恋しくなるっつーか?」
『乙女心って複雑よねー。』
頁を捲りながら気のなさそうに言う春炯に、苦笑する。
移動中の彼女の友は、専ら文庫本。
時々悟空や悟浄と共にカードゲームに興じてはいるが、大体がふたりの為だろう。
「なるなそんなモン」
「……なあ」
ポツリと浮かんだ声の調子に、ミラー越しに視線を向ける。
膝を抱えて、視線を固定した悟空の大きな瞳に映る、常にはない微かな陰り。
「紅孩児ってどーなったのかな。――ちゃんとまだ、生きてんのかな」
「敵の心配してりゃ世話ねぇな。」
「――だってッ、だって俺がっ……!『悟空』
円い声が車中に短く響く。
『彼は、自分の意志であの闘いを選択したんでしょう。貴方が気に病む必要はないわ。』
「そぉーそ。あいつが簡単に死ぬよーなタマか?ゴキブリ並みにしつけーんだからよ。」
「同類がそう言うんだから、間違いないですねぇ。」
「………おめーよ」
「…うん」
へらりと破顔した悟空と、仄かな笑みを唇に浮かべて頁を捲る春炯とを視界に収め、前方へと注意を戻す。
「そーだな。」