第21話 "BE THERE">1<
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「お呼びですか、お師匠様。」
障子の向こうで膝をついていた少年が、こちらに視線を流す。
ここが金山寺というお寺だという事は聞かされていたが、三蔵様以外の人間を見たのは初めてだった。
深紫の瞳は一瞬女の子かと思った程に大きく、声音も村の男の子達と違って大分柔らかい。
「ああ、江流。」
「こちらへ」と手招きされた少年が腰を上げ、こちらへ歩いてくる。
遠くも近くもない、微妙な位置に再び腰を下ろしたその目が暫し自分に留まり、ややあって三蔵様を向く。
「春炯と言います。暫くの間ここで暮らしますから、仲良くして下さいね。」
「……はぁ」と再びこちらを向いたその目がまた、三蔵様へと戻る。
「とは申されましても、私にも仕事がありますから…」
「出来る範囲で構いません。」
にこりと微笑む三蔵様と、微かに眉根を顰めたその子とを視界に収めて内心で、驚く。
しごと。
自分とそう歳も変わらないのに、この子はここで働いているのだ。
「どうしました、春炯?」
よく似た顔でこちらを見つめるのに慌てて首を横に振り、なんでもない事を示す。
ひっきりなしに降ってくる柔らかな色と
それの散らばる畳の香りもそういえば、生まれて初めて
嗅ぐ匂いだった。