第21話 "BE THERE">1<
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生まれた村は、どこにでもあるような極普通の村だった。
住民のほとんどが顔見知りといった程度の、小さな村落。
優しい母に、優しい父。
一人娘の私は両親の愛情を一身に受けて、ほとんど無限に甘やかされて育った。
狭くて安全な世界の中で更にしっかりと、厳重に、守られていた。
――逃げなさい、早く!
突き飛ばすようにして自分を引き離した時の母の、煤で汚れた顔が瞼に蘇って膝を引き寄せる。
『………』
剥き出しの白い爪先に落ちてきた薄桃色の花弁に眉根を顰め、振り払う。
「春炯。」
視線を上げると柔和な笑みとぶつかって、瞬く。
その拍子に頬を伝った雫を長くて温かい指先がそっと、退けてくれた。
「春とはいえ、まだこの辺りは寒いですからちゃんと暖かくしていて下さいね。」
ふわりとかけられた法衣からは、微かな煙の匂いがした。
『……ありがとう。』
久し振りに発した声が、自分のものではないみたいに聞こえて少し、恥ずかしくなる。
「…いいえ、どういたしまして。」
そのまま隣にいてくれるのをしばし見やり、顔を前へと戻す。
『……三「失礼致します。」