第21話 "BE THERE">1<
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――――10年前
「拾い癖ついてない?」
「はい?」
「それ」と顎で示されているのに気づき、顔を上げる。
「ああ…」と先程と全く同じトーンで声を発した男性が、こちらに顔を落として微笑んだ。
「なんて失礼な男でしょうね。女性に向かって、それ、だなんて。ねぇ春炯?」
『………』
動かした唇からでも、音は出なくて。
代わりに繋いだ手に少し力を込めると、やんわりとした力で握り返された。
「…いつの間に名前…」
「昨日休む前に教えてくれました。”春”の”炯”と書いて春炯。」
「ね」とまたも微笑むのを見返し、顎を引く。
「…あ、そ。でどうすんのその娘、小さくても一応女だしまずいんじゃないの?」
「別にまずくはないですよ。みつからなければどうという事はありません。」
「いや、無理あるでしょ…」
「だけどまだお知り合いになったばかりですし。ゆっくり考えますよ。淋しいじゃないですか。ねぇ、春炯?」
呼ばれる度
春炯
なんだか、別の誰かの名前のように感じてしまう。
それでも伝わる温もりのまるで違いは分からなくて、やっぱり応える事は、出来なかった。
「…おアツイ事で。」