第15話 螺旋の暦 5
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…行くぞ。」
「待てよ、忘れモン。」
地面に胡坐をかいたままの叶が、そう言って開けっ放しにしてある家の扉を指差す。
忘れモンが何なのかを悟り、家へと向かう。
必要最低限で揃えられた家具は、記憶の中のものとほとんど変わっていなかった。
「お前」
テーブルに置かれた銃弾の入った箱を手にし、踵を返す。
「俺が、死んだら悲しむヤツいるんだろ?って聞いた時曖昧な答え方してたけど、いるじゃないか。ちゃんと。」
扉の内側に寄りかかって待っていた叶が、視線を外に向けて言う。
何やら騒がしい悟空と悟浄の横で、春炯と八戒が全く違う方向に顔を向けて恐らくは全く関係のない話をしていた。
「良かったな。」
視線だけを返して歩き出すが、眩しそうに外を眺めている叶と視線がかち合う事はない。
その脇を通り抜ける時「またな」と短い言葉が耳に、届く。
ともすれば聞き逃してしまいそうな音量の声に、9年前ここを出て行く時も同じ様に言葉をかけられた事を、思い出す。
あの時自分は、何も答えなかった。
”また”など、ある筈がないと思っていたから。
けれどそんな子ども染みた自分の思惑に反して、”また”はあった。
2度ある事は3度あるなどということわざを信じる訳ではないが、それでも。
「…またな。」
そう答えるのも悪くは、ないのかもしれない。