第15話 螺旋の暦 5
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肩を竦めて言うと、紫暗の瞳がひとつ瞬く。
「2時間も3時間も鳥が鳴かなかったら?」
確かに、いくら山の中とはいえ有り得ない事ではない。
どうしたもんかと考えを巡らしていると、密やかな溜め息が耳に聞こえた。
「そのうち何人か追いかけてくる筈だ。その辺に線を引いておいて、それを越えたらというのは?」
「だったらあのお嬢さんに何か合図を出してもらった方が早くないか?」
顎でしゃくると、分かるか分からないかくらいに首が振られる。
「俺が頼んでも?」
只人ではない佇まいに興味半分で尋ねてみるが、また。
「手出しをする気がないというのは、手を貸す気がないというのと同義だ。」
「…知った風だな。」
「分からない事の方が多い。」
手近にあった木の枝で平地が始まって1m辺りの所に適当に線を引きながら、笑う。
憮然とした物言いが恐らくは、その耳にも届いている筈なのに。
「お前、良くなったな。刺々しいのは変わらんが、1本1本の棘の先が少しは丸くなってきてる。」
何の事だと言わんばかりに目を細めるのに知らず、笑みが、深くなる。
「俺にとっては命がそうだったが、滅茶苦茶に振り回してくれる相手ってのは必要だぞ。」
「……間に合っている。」
そうだろうなと内心で、相槌を打つ。
でなければこの変化は、有り得ない。