第15話 螺旋の暦 5
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早朝の、薄く霧の立ち込める山道。
少し湿り気を帯びてきた髪や着衣に、霧も水で出来ている事を知る。
と、一定の距離を置いて後ろをついてきていた筈の気配が絶えている事に気づき、半ばうんざりした気持ちで振り返った。
「………」
朝露に濡れた露草の青に見入っていたその目が視線に気づき、こちらを振り仰ぐ。
そのまま無言で同じ位置まで昇ってくるのを待っていると、ふと何故か嬉しそうに笑うのに眉根を寄せた。
『待っていてくれなくてもいいのに。』
『目的地は一緒な訳だし』と続けるのを背中で聞きながら、一歩踏み出す。
「………」
『私の事は特に気にしないでね。別に殺し合いに水を差すつもりはないから。』
「………じゃあ何しについてきたんだ。」
『桜花との約束を守る為。斜陽殿の巫女として、三仏神様に恥じぬ生き方をしないとね。』
「……約束って。」
『教えない。』
こめかみを引き攣らせて振り返った肩越しに、喉まで出かけた言葉が行き先を、見失う。
つと上目遣いに真っ直ぐな、眼差し。
「…~ッ」
無い筈なのに。
血の、繋がりなんて。
その貌は反則だと憤りながら再び向けた背にふと、『待ってたのかな』と何でも、ない事のように。