第15話 螺旋の暦 5
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「…なんだ?」
引っ掛かるような間を挟んで返ってきた声に、天井を見上げたままひとつ、瞬く。
「明日、勝つつもりですよね?」
「………ああ。」
「なんだか、その微妙な間が気になるんですけど。しっかりして下さいね。桜花が悲しんでも、貴方が叶さんを殺したくないと思ってても、僕としては貴方に勝ってもらわなきゃ困るんですから。きっと悟空と悟浄も… 春炯もそう、思っていますよ。」
言って、なんだかなと思う。
「…何笑ってんだ。」
「いえ、我ながら飾った言葉並べてるなぁって思って。人でも言葉でも、飾る事がそんなに悪い事だとは思えないんですけど…なんか、滑稽な気もしてきて。」
人にはそれぞれ、優先順位というものがある。
利己主義を振りかざしてでも、譲れないものがある。
「桜花の目の前で、叶さんを殺して下さい。」
告げた言葉が、響いて闇に、溶けていく。
「結局は、そういう事なんです。」
目を閉じた身体にその真意が馴染んでいくのを感じた。
「…そういう事か。」
微かに空気を揺らがせる程度の、密かな呟き。
「三蔵?」
「――殺せる…」と同じ言葉が、先よりも強い語調で繰り返される。
それきり満ちた静けさに小さく息を吐き、瞼を閉じた。