第15話 螺旋の暦 5
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『今夜は寒いわね。』
ひんやりとした空気の入ってくる窓をカーテンで隠した春炯が、笑みを浮かべて振り返る。
「…ん。」
室内を満たす空気に居た堪れない顔つきの悟空が、枕を抱きかかえて頷く。
その頭を軽く撫でた目が自分に向き、やがてどちらからともなくもうひとつのベッドを見やった。
『桜花。』
一点に固定されたままだったその瞳が、のろのろと相手を探す。
辿り着くよりも早く床に膝をついた春炯が、そっとその手を握って眉根を下げた。
緩く波打つ栗色を梳いた掌が、小さな頭を胸に抱く。
「…春炯」
桜花の指先がきゅっと握られるのを見ながら、煙草に火を点けた。
「人って…死んだら、どうなるの?生きていた時の事とか…覚えて…いると思う?」
『そうね…』
吐息のような声を零した春炯が、長い睫毛を伏せる。
『例えば、夢を視た後……いつも、悲しくなるの。どうしようもないくらいに…名前も思い出せない人達なのに、不思議よね。でもそれは多分、躯が覚えているんだと思う。その人達を想う、私の…心を。』
考えるように言ったその目がどこか、違う景色を浮かべている事に、気づいて。
『心の記憶と、躯の記憶と。形はどうあれ、今此処に貴女が在るのならそれはやっぱりどちらかがきっと…貴女をここに、私達のところに連れてきてくれたんじゃないかしら。一緒に確かめましょう。誰に、何を伝えたかったのか…。明日、きっと全部分かるわ。』
「…………うん。」
微かに濡れた小さな返事に被せるように、煙を吐いた。