第14話 螺旋の暦 4
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「………悪かった。」
ややあってそう告げると、大きな瞳がこちらを見返す。
何となくだが、桜花の言いたい事は分かるような気がする。
例え”自分”が揺ぎなくそこにあったとしても、それは人との関わりの中で初めて存在するものとして認められるのだと思う。
幼い頃、義母と兄と共に過ごしたあの家で、自分の存在は決して希薄ではなかったけれど
かと言って、確かでもなかった。
「なぁ、どうしても思い出さなきゃダメなのか?」
黙って桜花の事を見ていた悟空が、口を開く。
「普通記憶を失くしてしまったら気になって、思い出したいと考えるんじゃなくて?」
「そういうモン?俺、そうでもなかったからよく分かんねぇけど…。」
「悟空と私とでは状況が違うわ。貴方には過去が無くても、今がある。未来もある。でも、私にはもう、過去しかないの。」
諦観の籠った言葉と、その顔つきに。
「…いっそ、このまま飽きるまでこっちで過ごしてもいいんじゃねぇ?」
胸が痛んだと言ったらそれはまた、違うような気がするけれど。
「それはすなわち、貴方に憑いたままって事になりますけど?」と一拍挟んで形の良い眉を上げた桜花が、こちらを見下ろす。
「それはちょっと…」
腹が立ったのは、本当だ。
「心配なさらなくても、5、60年もすればこちらにも飽きますから。」
「俺の人生の方が早く終わりそうなんですケド?」
「ご安心を。貴方絶対に、図太くしぶとく生き残るタイプですわ。」