第12話 螺旋の暦 2
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低く押し殺した声と、面倒くさそうな視線。
こちらに目を向けながらもしきりに瞬きを繰り返す男に、一歩足を踏み出す。
「……お前…」
逆光から抜け出た自分の姿に記憶にある琥珀色が見開かれ、呆然と呟く。
「覚えているみたいだな。」
「お前みたいな生意気なガキ、忘れるわけないだろ。」
薄く笑みを浮かべた表情に違和感を感じて、眉根を寄せる。
返ってくる毒舌は相変わらずだが、纏う雰囲気がまるで、違う。
記憶の中の叶という男の浮かべる笑みと、今目の前の笑みとが限りなく近いところで重ならない。
重くどろりと濁った眼に、以前の光は垣間見れない。
削げた頬に、まばらな不精髭、乱れた長髪。
床に転がる幾つもの酒瓶に気づきながら、口を開く。
「銃弾を売って欲しい。以前と同じ物だ。」
食い入るようにこちらを見つめていた叶が、乾いた笑みを唇に昇らせる。
「相変わらず、お前は殺し続けてるって訳か。」
水でも煽るように琥珀色の液体を一気に干したその手が、グラスごと机に叩きつけられる。
すぐ後ろに立っている春炯が、法衣の背中を小さく引く。
「………」
「…生憎だが、俺はもう人殺しの道具は作っていない。」
言外に帰れと告げるその横顔はそれ以上語らずまた、酒を注ぎ始める。
暫しの後待つ事の無意味さを悟って、開け放った扉をそのままに踵を、返した。
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