第12話 螺旋の暦 2
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「よし、飲んだな。」
奪うように器をとって、一気に喉に流し込む自分を見ていた男が満足げに頷く。
「…俺の服と荷物は。」
嚥下したばかりの液体が胃から喉へと逆流しそうになるのを何とか堪え、言葉を発する。
今自分が身につけているのは、多分この男の物であろうサイズの合わない寝巻きだ。
「服は血塗れの泥塗れだから、これから洗う。」
「荷物は。」
「ちゃんと預かってある。だが金冠に小銃に経文っていう異様な組み合わせは兎も角、ガキの持ち物じゃないだろ。どっかから盗んできたのか?」
無言の抗議として視線を強めると、男が何を思ったか愉快そうに笑う。
「いい眼だ。人の1人や2人殺せそうだな。分かった。お前がただのガキじゃないってのは認めるよ。だが服と荷物を渡したらどうする気だ?」
「出ていく。」
「その傷でか?腕折れてんだぞ。」
「足は折れてない。」
「まぁ、それもそうだが…」と呆れたようにこちらを見下ろしていた男が、自身の髪を一房指に絡める。
「お前、名前は。」
「ない。」
間髪入れない答えに、男の左眼が小さく見開く。
あながち、嘘ではない。
名などというものは、それを呼んでくれる誰かがいてこその、ものなのだから。