第12話 螺旋の暦 2
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ぽつ、と頬に落ちた水滴が頬の上を、流れていく。
くすぐるような感触に、意識が戻った。
リズミカルに感覚を刻んでいく水滴が頬と言わず髪にも、手にも落ちていく。
雨だ。
意識すると同時にうつ伏せていた状態から寝返りを打つようにして、仰向く。
瞬間全身を襲った激痛にきつく、目を瞑る。
別に誰が聞いているという訳でもないのに漏れそうになる呻き声を喉で押し潰し、痛みが和らぐのを待ってからゆっくりと、瞼を持ち上げる。
視界一面にどんよりと広がる灰色の雲と、そこから際限なく落ちてくる細い雨。
右腕を上げようとしたが、打ち身や捻ったというレベルではない鈍い痛みが邪魔をする。
代わりにと左腕を持ち上げると、べっとりと纏わりついている血が雨と混ざって着物に隠れた肘へと流れていく。
構わず胸元へと持っていった手に触れた堅い感触に安堵し、切れた唇の端を引き上げる。
先程まで対峙していた妖怪達が自分の追っている師の仇でなかった事は口惜しいが、魔天経文を守り抜く事は出来た。
決して望んだ訳ではないけれど、受け継いだ三蔵の名と共に与えられた物。
優しさとか、知識とか何も持たない自分に沢山のものを与えてくれた師が、最期にくれた物。
握り締めた筈の指に感じていた感触が段々と遠のくのと比例して、瞼が重くなってくる。
痛みが和らいでいくように感じるが、それは単に意識がまた途切れかかっているからだ。
死という言葉が頭を掠めるが、抗う気も起きずどこか投げやりに、瞳を閉じる。
やがて全身を打つ雨粒の冷たさも、その音さえ遠ざかっていく、中。
「おい、死んでるのか?」