第12話 螺旋の暦 2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
前を行く三蔵と八戒の背中を見ながら、ただひたすらに山道を登っていく。
緩やかな登り、とは言い難くただ山肌を削っただけの簡素な階段が大木によって、ふいに途切れる。
視線を巡らせると、左側の林の間に小さく建物が見えた。
まだ距離があるからそう見えるだけで、平屋建ての建物の造り自体は中々立派そうだった。
と、後ろから吹いてきた風に髪を引かれるようにして振り返って一瞬言葉を失くす。
『すご…』
山裾に半円を描くように広がった街が、一望出来る。
緑の向こうの赤茶けた大地とのコントラストの鮮やかさに目を奪われていると、「春炯」と八戒の声が降ってくる。
少し上の方からこちらを見下ろす八戒のその向こうの三蔵が、黙々と歩みを進めていくのが見え、慌てて足を踏み出す。
大木を右回りに抜けた先で、八戒が待ってくれていた。
「足元、気をつけて下さい。」
目を落とすと、成る程生い茂る草と、苔生した岩で一歩目を探すのにも戸惑ってしまう。
『三蔵、何処行くの?』
「目的地に決まってる。」
「目的地って、あれじゃなかったんですか?」
「そんな事言った覚えはない。」
先程の建物を指差して問う八戒に、三蔵は振り向きもしない。
「機嫌、悪いですね。」
「誰のせいだ。」
静かな攻防を聞きながら髪を、まとめなおす。