第12話 螺旋の暦 2
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『…すみません。』
階上を見上げていた希紗が、口元に手を中てて笑う。
「元気で良いですね。」
止めていた手を動かすと、またゴリゴリという音に混じってコーヒーの良い香りが漂い出す。
ややあって軽いノックの音が響き、希紗が「はぁい」と手を拭いて扉を開けた。
「おはようございます。朝から騒がしくして、すみません。」
「構いませんよ。気にしないで下さい。」
爽やかな笑みを浮かべた八戒がこちらに気づき、歩いてくるのに『おはよう』と告げれば。
「おはようございます。よく眠れました?」
モノクルを外したその顔は、何というか男性にしては驚く程たおやかで、優しい。
『うん。気を遣ってもらって、ありがとう。いつも…だけど。』
後半をミルに目を落としながら呟くように付け加えると、秀麗な面差しが柔らかく笑うのが気配で分かった。
「良い香りですね。」
『ね。飲む前から美味しいの、分かるよね。』
顔を上げた瞬間、視界の端を過ぎった長い指先を追うように目線を上げると、弱冠驚いたような八戒と目が合う。
『…なぁに?』
「あ、や…ははは。」
『?』
そのまま向かいの椅子を引くのを眺め、ややあって再び豆を挽き始める。
結構な間を挟んで「僕にもやらせて下さい」というのに、知らず頬が、緩んだ。