第11話 螺旋の暦 1
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夕暮れを示す表現として、黄昏という言葉がある。
薄暗くなりかけの時分、人の見分けがつきにくくなり[誰ぞ彼は]と問う言葉から来たものだと言われているのだそうだ。
「――…で、なんなワケ?」
突然始まった講釈を一通り聞き終え、先を促す。
何故いきなりそんな事を話し始めたのか。
隣の悟空も、ついでに言えばその隣の春炯も、きょとんと瞳を瞬いている。
まあ確かに今は、八戒の言うところの”黄昏時”ってやつなのだろうが。
「特に意味はないんですけど、悟浄と悟空、退屈だ退屈だって喚いてましたから。」
そう口にした八戒の目が、ちらりとこちらを窺う。
悟空の頬を引っ張ったまま、ついでに言えば髪の毛を一房掴まれたままの状態でそれを受け止め、ひとつ瞬く。
「掴み合いのケンカ始める程退屈なら、ここは一つ為になる話でもして退屈を紛らわしてもらおうと思ったんですよ。」
口調はあくまでも穏やかで。
すでに前方へと戻されているその顔にもきっと、人の良さそうな笑みが浮かんでいるだろう。
だが。
「「………」」
無言のまま悟空と目を見合わせ、どちらからともなく互いに互いを掴んでいた手を離す。
だが、しかし。
「………」
車内に落ちた沈黙の上を、乾いた風が吹き抜けていった。