第10話 In a tender cage 2
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「くそッ」
辺りを包む霧は、一層濃くなっていた。
視界はひどく悪く、数歩先にある樹木ですら薄っすらと影が映る程度だ。
加えてこれも術の効果なのだろう、方向感覚と平衡感覚が進むごとに狂わされていく。
最早自分がどこをどう走っているのか、真っすぐ走っているのかさえも分からない。
顎から滴り落ちる汗を拭いながら、周囲に視線を走らせる。
「流華、どこだ!どこにいる!」
大声で叫ぶが、その残響すら濃霧にたちまち呑まれていく。
「これって、やっぱアンタの能力なんじゃねえか!もういい加減にしようぜ!」
「違う!」
霧の向こうから返ってきた金切り声に、足を止める。
「私じゃない!私のせいじゃない!全部母さんがやったのよ!!」
声のした方へ爪先を向け、駆け出す。
「母さんが村を棄ててここに住むようにして、母さんが霧で世界を、分断したの…!」
少しずつ近づいてくる声が明確さを、増していく。
「みんな…みんな母さんがやったの!私は、ただ…っ」
そこに紛れる嗚咽に気づく頃にはもう、自分で自分を抱き締めるようにして蹲る流華の姿が見えた。
「どうして…貴方だって……なのに…――っどうして分かってくれないの!」