第10話 In a tender cage 2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一歩部屋に踏み込んだ途端、昂ぶっていた感情が一気に霧散する。
薄暗い空間には、ベッドが一台。
情景に抱いた違和感と不審感に急速に冷静さが戻ってくるのを感じた。
咄嗟に尖らせた神経と走らせた視線にだが、向かってくる脅威はない。
「………」
無言のまま一歩を踏み出すと、床に薄く積もった埃が舞い上がった。
ベッドの傍らで足を止め、盛り上がったその膨らみを見下ろす。
「オイ、婆さん。聞こえてるか。」
しかし、白髪だけを毛布の端から覗かせている流華の母は、微動だにしない。
言葉も解さない程に衰弱していると言うのだから当然かもしれないがそれにしても、妙だ。
みるみる膨らんでいく嫌な予感に躊躇わず、毛布に手を伸ばす。
そしてその下から現れたものに息を飲んだ瞬間だった。
「何をしてるんですか!?」
悲鳴のような怒声が響き渡り、半ば自失したまま振り返る。
戸口から射す明かりを背にして立つ流華の顔は、怒りに歪んでいた。
「この部屋には近づかないでって言ったでしょう!?」
土で汚れた靴や手をそのままに声を張り上げるのに向かって口を、開く。
「なあ。」
静かに声を掛けると、華奢な肩がびくりと揺れた。
「アンタには、コイツが見えてるか?」