第10話 In a tender cage 2
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呟くように言った流華が、顔を伏せる。
小さな後悔が胸の奥で疼くのを感じながら、視線を落とす。
「悪かったな。期待に添えなくて。」
煙草の先に残った火種を土で揉み消し、いまだ俯いている流華の横を通り過ぎる。
「あのバカども起こして、すぐに出て行くから。世話んなっ「無理です……」
背後から被せられた声に、肩越しに振り向く。
「ここからは、出られません……」
「は?」
「ここからは出られないんです。霧が、この家を被っているから。」
「…どういう意味だ?」
本格的に顔を顰て見つめると、流華がなんとも形容し難い目でこちらを見る。
「母が、霧で家を包んだんです。外の世界と分断する為に。私を守る為だからって…だから、出て行けないんです。」
「ウソだろ……」
手から、折れ曲がった吸殻が零れ落ちる。
小さく首を横に振る流華に背を向け、駆け出す。
白くけぶる林の中へ入り込むと、たちまち漂う霧が体に纏わりついてくる。
奇妙な違和感と、平衡感覚を失いかけた時のような半端な酩酊感を引き摺るようにして走る視界に不意に、黒く大きな影が浮かび上がった。
一足ごとに輪郭をはっきりとさせていくその影の下に佇んで、こちらを見ている人間のその申し訳なさそうな表情を見分ける事が可能になった瞬間、愕然とする。
「お分かり頂けましたか?」