第9話 In a tender cage 1
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借りたタオルで体を拭っていると、家庭的な匂いが鼻空をくすぐった。
見れば続き部屋から女が危なっかしげに盆を手にして歩いてくるところだった。
「あの、どうぞ。体が温まると思います。」
『すみません…』
まだ髪の先から雫を滴らせた春炯が申し訳無さそうに頭を下げ、差し出された椀を受け取る。
そうして一人ひとりに椀を渡していった女が、最後に一番玄関口に近いところに突っ立っている悟浄に「貴方も、どうぞ」と椀を差し出す。
「悪い」とそれを受け取ってすぐに目を逸らした悟浄からだが、女は視線をなかなか外そうとしない。
『本当に助かりました。でも、ここまで親切にして頂くと返って申し訳ないです。』
柔らかく礼と謝罪を述べた春炯の声に、女が顔をそちらに向ける。
「本当に。そんなに気を遣わないで下さい。」
「ああ。雨が凌げるだけで充分だ。」
「いえ、でも風邪を引いたりしたら大変ですから。倒れられでもしたら私も……その、困りますし。」
か細い声で言った女が、顔を伏せる。
「…成る程。」
口元が僅かに歪むのを感じながらそう言うと、春炯がくすりと笑った。
「確かに、そうかもしれませんね。」
『あ、ええと……』
「流華です。」
『私は紅春炯と申します。有り難くご好意に甘えさせて頂きます。流華さん。』