第9話 In a tender cage 1
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怒ったように言いながら走るその横で、どうしてか悟空がくすぐられたような小さな笑みを浮かべて走る。
しかし
「……止まねーぞ、おい。」
払っても払っても首筋に張りついてくる髪が、ウザったい事この上ない。
「いい加減黙れ、悟浄。鬱陶しさが増す…」
刺すような視線に、唇の端を吊り上げる。
「この状況で黙って走ってた方がよっぽど鬱陶しいだろ。なァ?」
「黙れっつってんだよ。それとも、強制的に黙らせてやろうか?」
「へいへい。仰せの通りにさせてもらいますよ、三蔵サマ。」
もう面倒くさいので言われるまま口を閉ざし、辺りを見回す。
さっきから一応雨宿りが出来るような場所を探しているのだが、周囲には傘代わりになってくれそうな枝さえ見当たらない。
木が密生しているせいだろうか、雨粒さえ凌げればそれでいいのに。
夜という事に加えて雨にけぶった視界は悪く、走りづらい。
雨水をたっぷり吸った服は重く体に纏わりつき、靴の中にまで水は染み込んできている。
「あ゛ー…ウゼぇえ」
もう一度髪を払って呟くと、後ろから名を呼ばれた。
『これ、貸してあげる。』
不思議に馴染む自分の名を呼ぶ声の響きと
「…サンキュー…」
まるで遠慮なく見上げてくるその眼差しに自分までなんだか、くすぐられるような心地がした。