欲を食らわば墓まで
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太陽は西へと傾き始めて、赤く燃える夕陽が、グラウンドを照らしている。むわりとした熱気が立ち込める中、オレ達野球部はティーバッティングをしていた。
「十分休憩ー!」
花井の号令を皮切りに、皆がドリンクを求めて、ウォータージャグへと群がる。オレはその波を避けてタオルを取り、グラウンドの端にある蛇口へと向かった。
蛇口を捻って水を出し、手のひらで顏を濡らすと、一気に生き返る。それから蛇口を上に向けて、少しぬるい水を喉に流し込む。
「万物の根源は何だと思う?」
急に後ろから質問されて、思わずむせた。ゴホゴホと咳をしていると「大丈夫?」という言葉が聞こえてくる。蛇口を締めて振り返ると、苗字が心配そうにこちらを見ていた。
「お前はホント急に話しかけてくるよな。つーか何でこんな所に居んの?」
「篠岡さんの草むしりを手伝っていたんだよ。バイトも無いし、家に帰っても一人で退屈だからね」
そう言う苗字の手には、土が付いている。どうやら草むしりを終えて、汚れた手を洗いに来たらしい。
「篠岡は一緒じゃねえの?」
「鎌を納めに倉庫へ行ったよ。野球部は休憩中?」
「おう。それより、さっきの質問は何だったんだ?」
先程された質問を思い出して、苗字に聞き返す。
「万物の根源は水である、という説を思い出してね。私は素粒子が根源だと思っているんだけれど、阿部はどう考えるのか興味があったの」
「オレの考え聞くよりも、もっと頭良い奴に聞いた方が、面白いんじゃねえの?」
「阿部も頭が良いでしょう」
褒められて悪い気はしない。こいつがお世辞を言うような奴じゃないので尚更だ。内心で喜んでいると、苗字が言葉を重ねてくる。
「それに君のことが気になるんだよ。考えていることや、見ている世界が気になるから、話がしたいと思うの」
そういえば、似たようなことを前にも言われた。あれは確か彼女が、野球部に入ろうかと、言っていた時。野球に興味があるのかと思ったら、オレに興味があるんだと、何食わぬ顔で言われたんだっけ。
それでいうと、オレもいつの間にか、こいつに興味を持つようになった。最初は不思議な奴だと思っていたのに。この気持ちの変わり様は、一体何だろう。考え込んでいると、苗字が不安そうに眉を下げる。
「……もしかして、嫌だった?」
「嫌じゃねえよ。むしろ……」
「むしろ?」
好きだ。
心の中で出た一言が、今までの違和感を、全て解決させた。そうか、オレはこいつのことが好きなんだ。自覚をした途端、頬がかっと熱くなる。
「どうしたの?」
「い、いや。むしろ、苗字と話すの、楽しいって思うよ」
少し吃りながら答えると、苗字はパッと顏を明るくした。
「そう言って貰えて嬉しいよ。私もね、阿部と話すのが楽しいの」
無邪気に笑う彼女が、夕陽に照らされて、一層魅力的に見える。自分の気持ちに気が付いた今は、この笑顔をオレだけの物にしたいと思った。
「十分休憩ー!」
花井の号令を皮切りに、皆がドリンクを求めて、ウォータージャグへと群がる。オレはその波を避けてタオルを取り、グラウンドの端にある蛇口へと向かった。
蛇口を捻って水を出し、手のひらで顏を濡らすと、一気に生き返る。それから蛇口を上に向けて、少しぬるい水を喉に流し込む。
「万物の根源は何だと思う?」
急に後ろから質問されて、思わずむせた。ゴホゴホと咳をしていると「大丈夫?」という言葉が聞こえてくる。蛇口を締めて振り返ると、苗字が心配そうにこちらを見ていた。
「お前はホント急に話しかけてくるよな。つーか何でこんな所に居んの?」
「篠岡さんの草むしりを手伝っていたんだよ。バイトも無いし、家に帰っても一人で退屈だからね」
そう言う苗字の手には、土が付いている。どうやら草むしりを終えて、汚れた手を洗いに来たらしい。
「篠岡は一緒じゃねえの?」
「鎌を納めに倉庫へ行ったよ。野球部は休憩中?」
「おう。それより、さっきの質問は何だったんだ?」
先程された質問を思い出して、苗字に聞き返す。
「万物の根源は水である、という説を思い出してね。私は素粒子が根源だと思っているんだけれど、阿部はどう考えるのか興味があったの」
「オレの考え聞くよりも、もっと頭良い奴に聞いた方が、面白いんじゃねえの?」
「阿部も頭が良いでしょう」
褒められて悪い気はしない。こいつがお世辞を言うような奴じゃないので尚更だ。内心で喜んでいると、苗字が言葉を重ねてくる。
「それに君のことが気になるんだよ。考えていることや、見ている世界が気になるから、話がしたいと思うの」
そういえば、似たようなことを前にも言われた。あれは確か彼女が、野球部に入ろうかと、言っていた時。野球に興味があるのかと思ったら、オレに興味があるんだと、何食わぬ顔で言われたんだっけ。
それでいうと、オレもいつの間にか、こいつに興味を持つようになった。最初は不思議な奴だと思っていたのに。この気持ちの変わり様は、一体何だろう。考え込んでいると、苗字が不安そうに眉を下げる。
「……もしかして、嫌だった?」
「嫌じゃねえよ。むしろ……」
「むしろ?」
好きだ。
心の中で出た一言が、今までの違和感を、全て解決させた。そうか、オレはこいつのことが好きなんだ。自覚をした途端、頬がかっと熱くなる。
「どうしたの?」
「い、いや。むしろ、苗字と話すの、楽しいって思うよ」
少し吃りながら答えると、苗字はパッと顏を明るくした。
「そう言って貰えて嬉しいよ。私もね、阿部と話すのが楽しいの」
無邪気に笑う彼女が、夕陽に照らされて、一層魅力的に見える。自分の気持ちに気が付いた今は、この笑顔をオレだけの物にしたいと思った。