欲を食らわば墓まで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そういえば、高橋と何の話をしてたんだ?何かお願いされてる様子だったけど」
もう一つ気になった事を質問すると、苗字はうげぇと眉を顰めた。
「いつから盗み聞きが趣味になったの?」
「趣味じゃねえよ。たまたま耳に入ってきただけ」
本当は聞き耳を立てていたが、それを素直に言うのは憚れる。あくまでも偶然を装うと、彼女は「本当かな」と疑ってきた。鋭いところがあるこいつには、嘘がバレているかもしれない。しかしそれ以上の追及はされず、ほっと胸を撫で下ろす。
「今度の文化祭で、グリーンティーカフェをすることになっているでしょう?」
「ああ、そうなのか?」
文化祭があることは知っているが、クラスの出し物までは知らなかった。名前からして和喫茶だろうか。
「そうなのかって……一切興味が無いんだね。まあいいけど、和装でお団子を提供するみたいでね。そこで接客に入ってくれないかって、頼まれたんだよ」
成程。バイトで接客をしているから、頼まれたという訳か。話の流れが分かり、納得がいく。
「それで、引き受けたのか?」
「うん。文化祭当日に奢って貰う代わりにね。本当は断ろうと思ったけど、許されない雰囲気だったからさ」
苗字は大きな溜息を吐いた。本当は接客をしたくないらしい。そんなこいつがメイド喫茶を選んだ理由は、恐らく給料の良さとか、そういう現実的な所だろう。それはさておき。
「お前、空気とか読めたんだな」
「まさか。私が読めるのは字だけだよ」
オレの失礼な発言を、気にするでもなく淡々と答える。否定をされてしまったが、嫌なことを頼まれて引き受ける奴が、空気を読めないとは思えない。彼女は思いのほか、優しい人間なんだろう。
「元々は楽なチラシ係だったんだけどねえ。そういえば阿部の係は――ああ、思い出した。お茶係だ」
「オレ自身も覚えてねえのによく知ってたな」
「君の関心が無さすぎるだけでしょう。その名の通りお茶を淹れる係なんだけど、大雑把な所のある阿部に務まるか不安だよ」
意地の悪い笑みを浮かべながら、苗字が軽口を叩いてくる。教室に来たときは尋常じゃない様子だったが、すっかりいつもの調子になったな。安心したオレは、思わず顏を緩ませる。
「え、なに?どうして悪態を吐かれて笑ってるの?」
「お前がいつも通りになって良かった」
その言葉を聞いた彼女は、キョトンとした様子で瞬きを繰り返した後、視線を宙に這わせて何かを考え込んだ。暫くして何かを閃いたのか、口を開いた。
「もしかして、心配してくれたの?」
頬をほんのりと赤く染めて、もじもじしながら聞いてくる。その反応にオレも気恥ずかしさを感じて、頭を掻きながら視線を逸らし、
「そんなんじゃねえよ」
と素っ気なく答えた。
もう一つ気になった事を質問すると、苗字はうげぇと眉を顰めた。
「いつから盗み聞きが趣味になったの?」
「趣味じゃねえよ。たまたま耳に入ってきただけ」
本当は聞き耳を立てていたが、それを素直に言うのは憚れる。あくまでも偶然を装うと、彼女は「本当かな」と疑ってきた。鋭いところがあるこいつには、嘘がバレているかもしれない。しかしそれ以上の追及はされず、ほっと胸を撫で下ろす。
「今度の文化祭で、グリーンティーカフェをすることになっているでしょう?」
「ああ、そうなのか?」
文化祭があることは知っているが、クラスの出し物までは知らなかった。名前からして和喫茶だろうか。
「そうなのかって……一切興味が無いんだね。まあいいけど、和装でお団子を提供するみたいでね。そこで接客に入ってくれないかって、頼まれたんだよ」
成程。バイトで接客をしているから、頼まれたという訳か。話の流れが分かり、納得がいく。
「それで、引き受けたのか?」
「うん。文化祭当日に奢って貰う代わりにね。本当は断ろうと思ったけど、許されない雰囲気だったからさ」
苗字は大きな溜息を吐いた。本当は接客をしたくないらしい。そんなこいつがメイド喫茶を選んだ理由は、恐らく給料の良さとか、そういう現実的な所だろう。それはさておき。
「お前、空気とか読めたんだな」
「まさか。私が読めるのは字だけだよ」
オレの失礼な発言を、気にするでもなく淡々と答える。否定をされてしまったが、嫌なことを頼まれて引き受ける奴が、空気を読めないとは思えない。彼女は思いのほか、優しい人間なんだろう。
「元々は楽なチラシ係だったんだけどねえ。そういえば阿部の係は――ああ、思い出した。お茶係だ」
「オレ自身も覚えてねえのによく知ってたな」
「君の関心が無さすぎるだけでしょう。その名の通りお茶を淹れる係なんだけど、大雑把な所のある阿部に務まるか不安だよ」
意地の悪い笑みを浮かべながら、苗字が軽口を叩いてくる。教室に来たときは尋常じゃない様子だったが、すっかりいつもの調子になったな。安心したオレは、思わず顏を緩ませる。
「え、なに?どうして悪態を吐かれて笑ってるの?」
「お前がいつも通りになって良かった」
その言葉を聞いた彼女は、キョトンとした様子で瞬きを繰り返した後、視線を宙に這わせて何かを考え込んだ。暫くして何かを閃いたのか、口を開いた。
「もしかして、心配してくれたの?」
頬をほんのりと赤く染めて、もじもじしながら聞いてくる。その反応にオレも気恥ずかしさを感じて、頭を掻きながら視線を逸らし、
「そんなんじゃねえよ」
と素っ気なく答えた。