欲を食らわば墓まで
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名前と友達になった文化祭から、一カ月程の時が経った。
彼女のことを好きだと自覚してから、その思いは強くなっていくばかりだが、野球を疎かにするわけにはいかない。仮に告白してオッケーされたとしても、付き合って恋人らしい時間を過ごす、なんて暇はないんだろうな。
その辺はオレも不器用だから――というか経験が全く無いので、上手いこと両立させる自信は無い。そんな中で告白するのは、野球とあいつに失礼なことだ。そう思っていた矢先のこと。
「まさか鎌倉遠足で隆也と同じ班になれるなんて。幸運だよ」
名前がサッチェルバッグを背負って歩きながら、柔らかな表情でオレに話しかけてくる。なんと修学旅行の予行演習である鎌倉遠足で、名前と同じ班になり、一緒の時間を過ごすことになった。もっと正確に言えば、オレと花井と水谷、名前とその他の女子二人だが。くじ引きで決まった男女の班だが運が良い。
「オレも名前と一緒で良かったわ。他の女子とは全然喋ったことねえしな」
大きく頷いていると、花井と水谷が「えっ」と大きな声を上げた。オレと名前で首を傾げていると、花井が目を丸くしながら口を開く。
「阿部と苗字さんって、名前で呼び合う程、仲が良かったのか?」
「まあな。こいつとオレは友達だから」
オレは名前の、唯一の友達。その揺るぎない事実が、独占欲を心地よく満たす。そう思っていると、女子の一人がこちらにやって来た。
「ねえ、苗字さん。良かったら連絡先の交換しない?」
「そうだね。はぐれた時のためにも……はい。トークアプリのQRコード」
女子三人が立ち止まり、男子と女子で綺麗に分かれる。ここからは女子が何を話しているのか分からない。それを確認したオレは、小声で花井と水谷に話しかける。
「あのさ。自由時間になったら、名前と二人きりにさせてくれねえか?」
オレの言葉に二人は「はっ!?」と再び大きな声を上げた。
「え、なに?あ、阿部ってもしかして……」
「ああ。オレ、あいつのことが好きなんだ」
堂々と告白すると、二人は顏を赤くして、オレと名前を交互に見る。
「アホ。あんま見てると、勘付かれるだろ」
「いや、え?あの苗字さんだよ?勝算あるの?」
水谷が不安げな表情で、オレに質問を投げかけてきた。確かに傍から見たら、あいつは堅物に映るだろう。
「今は野球で忙しいから、告白しようなんて気はねえよ。それでも出来るだけ、名前と一緒に居たいんだ」
素直な思いをぶつけると、二人は顔を見合わせ、暫くしてから頷いた。
「分かった。二人きりにさせるよ」
花井の言葉に、水谷がうんうんと頷く。
「ありがとな」
感謝の言葉を伝えると、二人は「楽しめよ」と言って、背中を押してくれた。
彼女のことを好きだと自覚してから、その思いは強くなっていくばかりだが、野球を疎かにするわけにはいかない。仮に告白してオッケーされたとしても、付き合って恋人らしい時間を過ごす、なんて暇はないんだろうな。
その辺はオレも不器用だから――というか経験が全く無いので、上手いこと両立させる自信は無い。そんな中で告白するのは、野球とあいつに失礼なことだ。そう思っていた矢先のこと。
「まさか鎌倉遠足で隆也と同じ班になれるなんて。幸運だよ」
名前がサッチェルバッグを背負って歩きながら、柔らかな表情でオレに話しかけてくる。なんと修学旅行の予行演習である鎌倉遠足で、名前と同じ班になり、一緒の時間を過ごすことになった。もっと正確に言えば、オレと花井と水谷、名前とその他の女子二人だが。くじ引きで決まった男女の班だが運が良い。
「オレも名前と一緒で良かったわ。他の女子とは全然喋ったことねえしな」
大きく頷いていると、花井と水谷が「えっ」と大きな声を上げた。オレと名前で首を傾げていると、花井が目を丸くしながら口を開く。
「阿部と苗字さんって、名前で呼び合う程、仲が良かったのか?」
「まあな。こいつとオレは友達だから」
オレは名前の、唯一の友達。その揺るぎない事実が、独占欲を心地よく満たす。そう思っていると、女子の一人がこちらにやって来た。
「ねえ、苗字さん。良かったら連絡先の交換しない?」
「そうだね。はぐれた時のためにも……はい。トークアプリのQRコード」
女子三人が立ち止まり、男子と女子で綺麗に分かれる。ここからは女子が何を話しているのか分からない。それを確認したオレは、小声で花井と水谷に話しかける。
「あのさ。自由時間になったら、名前と二人きりにさせてくれねえか?」
オレの言葉に二人は「はっ!?」と再び大きな声を上げた。
「え、なに?あ、阿部ってもしかして……」
「ああ。オレ、あいつのことが好きなんだ」
堂々と告白すると、二人は顏を赤くして、オレと名前を交互に見る。
「アホ。あんま見てると、勘付かれるだろ」
「いや、え?あの苗字さんだよ?勝算あるの?」
水谷が不安げな表情で、オレに質問を投げかけてきた。確かに傍から見たら、あいつは堅物に映るだろう。
「今は野球で忙しいから、告白しようなんて気はねえよ。それでも出来るだけ、名前と一緒に居たいんだ」
素直な思いをぶつけると、二人は顔を見合わせ、暫くしてから頷いた。
「分かった。二人きりにさせるよ」
花井の言葉に、水谷がうんうんと頷く。
「ありがとな」
感謝の言葉を伝えると、二人は「楽しめよ」と言って、背中を押してくれた。