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「わぁ、月が綺麗だね」
部活が終わり、駐輪場までの暗い道を歩いていると、隣を歩いていた苗字が夜空を見上げながら呟いた。小説家が聞いたら、死んでもいいわと返しそうなセリフだが、どうやら他意はないらしく、きらきらと目を輝かせて丸い月を眺めている。
「今夜は満月らしいな」
朝方のテレビで聞いた話を、そのまま口にする。特に興味がある訳ではないが、話題がないよりはマシだろう。すると彼女は視線を月から俺へと移し、柔らかく微笑みながら口を開いた。
「それなら今日はストロベリームーンだね」
「ストロベリームーン?」
「六月の満月のことを言うの。苺の収穫時期に因んで名づけられたみたいだよ」
「へえ。お前って色んな事、知ってるよな」
「そんなことないよ。たまたま知ってただけだから」
照れくさそうにはにかむ姿を見て、胸の奥の方がくすぐったくなる。最近になって自覚したことだが、どうもオレはこいつのことが好きらしい。マネージャーとして一生懸命にサポートしてくれる所とか、いつも笑顔で接してくる所とか、色んな所がイイなと思う。これが恋愛感情としての好きなのか、単なる仲間意識なのかはよく分からない。ただ、こうして一緒に帰るだけでも、幸せな気持ちになれるのだから、きっと前者なんだろう。そんなことを考えていると、苗字が言葉を重ねてきた。
「それでね、好きな人と一緒に見ると結ばれるって言われてるの」
その言葉を聞いて、思わず足を止めた。好きな人と一緒に見ると結ばれる。それをオレに言ってくるのには、何か意味が隠されているのだろうか。いや、きっと単なる世間話みたいなものだろう。そう思うのに、心臓が激しい鼓動を打って、顏に熱が集まっていく。
「そう、なのか」
なんとか平静を装いながら、相槌を打つ。それから再び歩き出すと、今度は数歩先を歩いていた苗字が立ち止まり、こちらを振り返った。長いまつ毛に縁取られた瞳には、オレだけが写されている。
「どうしたんだ?」
何かを言おうとしては口を閉じる彼女を見て、問いかける。苗字は大きく息を吸い込んでから、何かを決心したように顏を上げた。
「月が綺麗だね」
さっきと同じ言葉を告げられたオレは、今なら死んでもいいかもしれないと思った。
部活が終わり、駐輪場までの暗い道を歩いていると、隣を歩いていた苗字が夜空を見上げながら呟いた。小説家が聞いたら、死んでもいいわと返しそうなセリフだが、どうやら他意はないらしく、きらきらと目を輝かせて丸い月を眺めている。
「今夜は満月らしいな」
朝方のテレビで聞いた話を、そのまま口にする。特に興味がある訳ではないが、話題がないよりはマシだろう。すると彼女は視線を月から俺へと移し、柔らかく微笑みながら口を開いた。
「それなら今日はストロベリームーンだね」
「ストロベリームーン?」
「六月の満月のことを言うの。苺の収穫時期に因んで名づけられたみたいだよ」
「へえ。お前って色んな事、知ってるよな」
「そんなことないよ。たまたま知ってただけだから」
照れくさそうにはにかむ姿を見て、胸の奥の方がくすぐったくなる。最近になって自覚したことだが、どうもオレはこいつのことが好きらしい。マネージャーとして一生懸命にサポートしてくれる所とか、いつも笑顔で接してくる所とか、色んな所がイイなと思う。これが恋愛感情としての好きなのか、単なる仲間意識なのかはよく分からない。ただ、こうして一緒に帰るだけでも、幸せな気持ちになれるのだから、きっと前者なんだろう。そんなことを考えていると、苗字が言葉を重ねてきた。
「それでね、好きな人と一緒に見ると結ばれるって言われてるの」
その言葉を聞いて、思わず足を止めた。好きな人と一緒に見ると結ばれる。それをオレに言ってくるのには、何か意味が隠されているのだろうか。いや、きっと単なる世間話みたいなものだろう。そう思うのに、心臓が激しい鼓動を打って、顏に熱が集まっていく。
「そう、なのか」
なんとか平静を装いながら、相槌を打つ。それから再び歩き出すと、今度は数歩先を歩いていた苗字が立ち止まり、こちらを振り返った。長いまつ毛に縁取られた瞳には、オレだけが写されている。
「どうしたんだ?」
何かを言おうとしては口を閉じる彼女を見て、問いかける。苗字は大きく息を吸い込んでから、何かを決心したように顏を上げた。
「月が綺麗だね」
さっきと同じ言葉を告げられたオレは、今なら死んでもいいかもしれないと思った。
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