暑い夜と冷たいワイン

  •  日中の外気温は36℃を超す。夜になれば多少下がるがそれでも32℃前後。
     時計が23時を回った頃、アレッシュはラーの寝室へやってきた。もちろんアポ取り済だ。

  • アレッシュ

    あ〜あっちぃー
    この国やっぱ暑過ぎるぜ

  • ラー

    夏本番は更に暑くなる
    暑いなら水でも被ってこい

  • アレッシュ

    これから気温下がるだろ?
    今被ったら風邪引くだろ

  • ラー

    冷水とまでは言っていない
    ぬるま湯程度でも体温を下げられる

  • アレッシュ

    そうだろうけど…

  • アレッシュ

    アンタは風呂入ったか?

  • ラー

    入った

  • アレッシュ

    ふぅん

  •  アレッシュは入室した扉から段々と離れ、ラーのいるソファへと近づいていく。そして冷たいワインを傾けながら目線を合わさないラーの背後からそっと腕を回した。

  • ラー

    暑いのではなかったか?

  • アレッシュ

    この部屋はちょうどいいからな

  • ラー

    お前はシャワーを浴びてないのか
    汗のにおいがする

  • アレッシュ

    浴びてたって道中汗かくしあんまり変わんねえだろーよ

  • ラー

    体臭が変わる

  • アレッシュ

    アンタ鼻いいよな

  •  くんくん……

  • ラー

    ……嗅ぐな

  • アレッシュ

    石鹸のにおいがする

  • アレッシュ

    いつもの香煙のにおいがすっかり落ちてるな

  • アレッシュ

    チュ……

  • ラー

    ……っ

  •  右側からラーの首筋に軽く唇を触れさせる。それから上へ、耳朶を軽く甘噛むとラーの肩がぴくりと震えた。
     肩を竦め、顔を右へ振って抵抗している。

  • アレッシュ

    ……なあ

  • アレッシュ

    汗かくことシようぜ

  • ラー

    その前にこのワインを呑んでおけ

  • アレッシュ

    ……

  • ラー

    ……

  •  数拍の沈黙後、ラーがワインを口に含む。
     躊躇う様子はあるものの、アレッシュは欲望に任せてその唇に吸い寄せられていた。冷たいワインが流れ込み、柔らかな感触は熱を帯びてくる。

  • ラー

    ……お前の言う汗をかくこととはどんなことかやってみせろ

  • アレッシュ

    はは、仰せのままに

  • 数時間後
  •  テーブルに置かれたワインクーラーの氷はすっかり溶け、ワインはぬるくなっていた。

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