1章 蕾

「以上、報告になります」
 さらりとした銀髪が流れ落ち、男は頬杖をつきながら報告に耳を傾けていた。
「ご苦労。下がりなさい」
 黒子は一礼し姿を消し、その男、軍師はニヤリと口角を上げる。
「玉兎との接触は大きいものだ。彼は器として優秀個体だからね。今回はいい収穫だった……そう思うだろう?空木うつぎ
 部屋の隅に寄りかかる金色の瞳に亜麻色の髪を持つ端正な顔立ちの男は無言で睨みつける。それでも軍師は笑顔を崩さず話を続ける。
「お前は彼をずっと気にかけていたからね。良かったじゃないか。彼は……」
「黙れ」
 軍師の言葉を遮り、空木は部屋を出る。勢いよく閉ざされた扉の音は部屋によく響く。
 ゆるりと開く軍師のその瞳は、空木と同じ金色を宿していた。
10/10ページ
お気に入り