忘れ物
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「あれー、おかしいなぁ・・・」
海南大付属高校1年、蓮見理緒。
今テンパってます。
あるべきものがない・・というより、あったものがなくなってしまった。
自分のせいで・・
この状況でテンパらない人が、果たしているのでしょうか?
「理緒、見つかった?」
「茜~、見つからない・・」
「そっかぁ・・どこにやっちゃったんだろうね、部活日誌」
そうなのです。
こともあろうに、部活日誌をなくしちゃうなんて。。
「やばいよね、これはさすがにやばいよね」
「まぁ、ね。情報も入ってるし・・ってか普通は失くす物じゃないから」
茜が呆れながら私を見る。
至極真っ当なその言葉に、何も言えなくなってしまう。
ホントに失くす物じゃないよね、部活日誌なんて・・・。
「あーもう!これから部活なのに」
「朝から今まで探してどこにもないって事は、学校にはないんじゃないの?」
「つまり、家とか?」
「ん~一概にそうとは限らないけど、どう?」
よくよく思い返してみても、家に持ち帰ったってコトはない。
「家には・・・持って帰ってないハズ」
「そうかー。まぁしょうがないよ、キャプテンに相談してみたら?」
「う・・・すごく聞きにくいけど・・・すごく呆れられそうだけど・・聞くしかないか・・・」
茜と別れて、気が進まないまま体育館へ向かった。
体育館に入ると、もう部員の大半がランニングなどで体をほぐしていた。
端の方で部員達の練習を見守るキャプテンの牧先輩を発見。
「牧先輩ー!」
「おぉ、理緒か。いつもより少し遅かったな」
牧さんは私を見下ろしながら、柔らかく微笑んだ。
その笑顔に一瞬ホッとしかけるも、首を振って甘えそうな自分を戒める。
「あの・・・少しご相談が・・・」
「ん?どうした??」
「非常に聞きにくいというか、言いにくいんですけど・・・」
怒られるか、もしくは呆れられるのを覚悟で、意を決して聞いてみる。
「あの、部活日誌ってどこにあるか知ってますか?」
「部活日誌?」
あぁ~、牧先輩も何の事?って顔してるよ。
普段部室からあんま持ち出さないから失くすのが不思議だよね。。
すると牧先輩は突然手を叩いて
「・・・あぁ、アイツが言ってたのはそのことか」
「?アイツ??」
「翔陽の藤真だよ。昨日練習試合をしに行っただろう?」
「あ、はい」
牧先輩と神奈川の双璧って呼ばれてる藤真さん。
カッコ良くて、バスケもうまくて、さらに紳士的。
練習試合で会った時も、男子の中に女子が1人の私を気遣ってか、敵チームのハズなのにいつも何かと労いの言葉をかけてくれる。
そんな人がモテないわけがなく、人気もハンパないんだけど密かに憧れる存在。
そんな藤真さんが何を?
不思議そうに首をかしげる私をよそに、牧先輩は自身のスマホを取り出して
「アイツから昨日夜に連絡がきたんだよ。『海南のお姫様がガラスの靴を置いていったよ』って、ほら」
そういって牧先輩は藤真さんとのやり取りを見せてくれた。
・・こ、これは破壊力がヤバイ。
藤真さんて、こんな感じの文章を打つんだと思ったら・・
素の藤真さんを少し垣間見た気がして、ドキドキが止まらなくなった。
ってか、お姫様って!
藤真さんが私のことをお姫様って!
かっこよすぎです!!モテる人はこれをナチュラルに言うところが怖い!
「理緒?どうした、大丈夫か?」
「は、はいぃ!平気です」
大丈夫なわけがないけど、勝手に舞い上がってこれ以上おかしい人になりたくない。
1人盛り上がって熱くなった顔を、手で仰ぎながら返答をした。
牧先輩はそんな様子のおかしい私を見て、少し笑いながらも続ける。
「それでな、今日部活が終わったら、翔陽まで取りに行くことになってる」
「え、翔陽までですか!?」
「うちが置いてきてしまったものだからな」
牧先輩はそう言いながら、仕方ないといわんばかりの表情で眉尻をさげて笑った。
「そ、そうですよね、もちろん取りに行きます。・・牧先輩も一緒ですよね?」
「いや、俺は部活が終わったら、清田の練習を見てやらねばならなくてな」
「えぇ!ちょっと待ってくださいよ。私1人で行くんですか!?」
1人でなんて緊張するし不安だし、何より心細すぎる!
そんな私の気持ちを絶対に察しているのにも関わらず、牧先輩は無情にも気付かないふりをして
「おぉ、頼む。よし、そうと決まったら部活始めるぞ」
あっさりそう言い放つと、部員達の方へまぎれていった。
・・私・・・大丈夫なのかな・・
―――
「「「「「「あ(りがとうございま)したっ」」」」」」
「お疲れさん」
高頭監督の話が終わり、皆各々帰り支度や自主練習に散る。
それと同時に、私も真っ先に着替えて荷物をまとめる。
「じゃあ理緒、気を付けてな」
「・・はい。無事に日誌を持ち帰ってきます」
緊張と不安は相変わらずだったが、バスの時間もあったので小走りに校門を出た。
なんか藤真さんのことばっか考えてて、正直部活どころじゃなかったな。
ただ日誌を取りに行くだけなのに・・絶対お姫様発言のせいだ。
理緒が出て行ったあとの海南大付属体育館では――
牧は理緒を見送った後、スマホを取り出した。
その画面には部活前に理緒に見せた藤真とのトーク画面が出ていた。
実は理緒に見せたやり取りには続きがあったが、牧はわざと見せなかったのだ。
「悪いな、理緒。」
口元に小さな笑みを浮かべながら、改めて藤真とのやり取りを見る。
『今日、俺達は負けたけど、いい試合だった。また頼むぜ。
ところで、海南のお姫様がガラスの靴を置いてったよ』
ここまでが理緒が見た内容。
『だから明日部活が終わった後、取りに来いよ。
ただし、蓮見さんが1人で。
海南の奴らには悪いが、俺は本気だから。
明日蓮見さんが来たら、告うつもりだ』
こんなことをわざわざ自分に言うということは、理緒に好意を寄せている奴らを引き留めておけ、ということだろうな。
牧は読みながら、バスケ以外に必死になる藤真を見るのが新鮮で面白いのか、思わずふっと声を出して笑った。
「牧さ~ん、理緒急いでドコ行ったんすか?」
「あぁ、忘れ物を取りに翔陽まで」
「アイツ1人で行ったんすか!?それはマズイ!俺も追いかけないと!!」
ガシっ
急いで準備しようとする清田の肩を、牧がしっかりと掴む。
「清田、おまえは俺と練習だ。まだディフェンスが甘いからな」
「そんな~、牧さぁん」
海南大付属高校1年、蓮見理緒。
今テンパってます。
あるべきものがない・・というより、あったものがなくなってしまった。
自分のせいで・・
この状況でテンパらない人が、果たしているのでしょうか?
「理緒、見つかった?」
「茜~、見つからない・・」
「そっかぁ・・どこにやっちゃったんだろうね、部活日誌」
そうなのです。
こともあろうに、部活日誌をなくしちゃうなんて。。
「やばいよね、これはさすがにやばいよね」
「まぁ、ね。情報も入ってるし・・ってか普通は失くす物じゃないから」
茜が呆れながら私を見る。
至極真っ当なその言葉に、何も言えなくなってしまう。
ホントに失くす物じゃないよね、部活日誌なんて・・・。
「あーもう!これから部活なのに」
「朝から今まで探してどこにもないって事は、学校にはないんじゃないの?」
「つまり、家とか?」
「ん~一概にそうとは限らないけど、どう?」
よくよく思い返してみても、家に持ち帰ったってコトはない。
「家には・・・持って帰ってないハズ」
「そうかー。まぁしょうがないよ、キャプテンに相談してみたら?」
「う・・・すごく聞きにくいけど・・・すごく呆れられそうだけど・・聞くしかないか・・・」
茜と別れて、気が進まないまま体育館へ向かった。
体育館に入ると、もう部員の大半がランニングなどで体をほぐしていた。
端の方で部員達の練習を見守るキャプテンの牧先輩を発見。
「牧先輩ー!」
「おぉ、理緒か。いつもより少し遅かったな」
牧さんは私を見下ろしながら、柔らかく微笑んだ。
その笑顔に一瞬ホッとしかけるも、首を振って甘えそうな自分を戒める。
「あの・・・少しご相談が・・・」
「ん?どうした??」
「非常に聞きにくいというか、言いにくいんですけど・・・」
怒られるか、もしくは呆れられるのを覚悟で、意を決して聞いてみる。
「あの、部活日誌ってどこにあるか知ってますか?」
「部活日誌?」
あぁ~、牧先輩も何の事?って顔してるよ。
普段部室からあんま持ち出さないから失くすのが不思議だよね。。
すると牧先輩は突然手を叩いて
「・・・あぁ、アイツが言ってたのはそのことか」
「?アイツ??」
「翔陽の藤真だよ。昨日練習試合をしに行っただろう?」
「あ、はい」
牧先輩と神奈川の双璧って呼ばれてる藤真さん。
カッコ良くて、バスケもうまくて、さらに紳士的。
練習試合で会った時も、男子の中に女子が1人の私を気遣ってか、敵チームのハズなのにいつも何かと労いの言葉をかけてくれる。
そんな人がモテないわけがなく、人気もハンパないんだけど密かに憧れる存在。
そんな藤真さんが何を?
不思議そうに首をかしげる私をよそに、牧先輩は自身のスマホを取り出して
「アイツから昨日夜に連絡がきたんだよ。『海南のお姫様がガラスの靴を置いていったよ』って、ほら」
そういって牧先輩は藤真さんとのやり取りを見せてくれた。
・・こ、これは破壊力がヤバイ。
藤真さんて、こんな感じの文章を打つんだと思ったら・・
素の藤真さんを少し垣間見た気がして、ドキドキが止まらなくなった。
ってか、お姫様って!
藤真さんが私のことをお姫様って!
かっこよすぎです!!モテる人はこれをナチュラルに言うところが怖い!
「理緒?どうした、大丈夫か?」
「は、はいぃ!平気です」
大丈夫なわけがないけど、勝手に舞い上がってこれ以上おかしい人になりたくない。
1人盛り上がって熱くなった顔を、手で仰ぎながら返答をした。
牧先輩はそんな様子のおかしい私を見て、少し笑いながらも続ける。
「それでな、今日部活が終わったら、翔陽まで取りに行くことになってる」
「え、翔陽までですか!?」
「うちが置いてきてしまったものだからな」
牧先輩はそう言いながら、仕方ないといわんばかりの表情で眉尻をさげて笑った。
「そ、そうですよね、もちろん取りに行きます。・・牧先輩も一緒ですよね?」
「いや、俺は部活が終わったら、清田の練習を見てやらねばならなくてな」
「えぇ!ちょっと待ってくださいよ。私1人で行くんですか!?」
1人でなんて緊張するし不安だし、何より心細すぎる!
そんな私の気持ちを絶対に察しているのにも関わらず、牧先輩は無情にも気付かないふりをして
「おぉ、頼む。よし、そうと決まったら部活始めるぞ」
あっさりそう言い放つと、部員達の方へまぎれていった。
・・私・・・大丈夫なのかな・・
―――
「「「「「「あ(りがとうございま)したっ」」」」」」
「お疲れさん」
高頭監督の話が終わり、皆各々帰り支度や自主練習に散る。
それと同時に、私も真っ先に着替えて荷物をまとめる。
「じゃあ理緒、気を付けてな」
「・・はい。無事に日誌を持ち帰ってきます」
緊張と不安は相変わらずだったが、バスの時間もあったので小走りに校門を出た。
なんか藤真さんのことばっか考えてて、正直部活どころじゃなかったな。
ただ日誌を取りに行くだけなのに・・絶対お姫様発言のせいだ。
理緒が出て行ったあとの海南大付属体育館では――
牧は理緒を見送った後、スマホを取り出した。
その画面には部活前に理緒に見せた藤真とのトーク画面が出ていた。
実は理緒に見せたやり取りには続きがあったが、牧はわざと見せなかったのだ。
「悪いな、理緒。」
口元に小さな笑みを浮かべながら、改めて藤真とのやり取りを見る。
『今日、俺達は負けたけど、いい試合だった。また頼むぜ。
ところで、海南のお姫様がガラスの靴を置いてったよ』
ここまでが理緒が見た内容。
『だから明日部活が終わった後、取りに来いよ。
ただし、蓮見さんが1人で。
海南の奴らには悪いが、俺は本気だから。
明日蓮見さんが来たら、告うつもりだ』
こんなことをわざわざ自分に言うということは、理緒に好意を寄せている奴らを引き留めておけ、ということだろうな。
牧は読みながら、バスケ以外に必死になる藤真を見るのが新鮮で面白いのか、思わずふっと声を出して笑った。
「牧さ~ん、理緒急いでドコ行ったんすか?」
「あぁ、忘れ物を取りに翔陽まで」
「アイツ1人で行ったんすか!?それはマズイ!俺も追いかけないと!!」
ガシっ
急いで準備しようとする清田の肩を、牧がしっかりと掴む。
「清田、おまえは俺と練習だ。まだディフェンスが甘いからな」
「そんな~、牧さぁん」
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