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「やばいっ!遅れちゃう!!」
早朝、ダッシュで道路を走り抜ける女の子が1名。
目的地は海南大付属高校体育館。
「すいません!少し遅れちゃいました!!」
ガラっと大きな音をたてて、体育館の扉を開く。
朝には不釣り合いなほどの騒々しさに、朝練をしている海南バスケ部部員が一斉に扉を見た。
「理緒、おはよう。2分前だからギリギリセーフだよ」
「神・・先輩・・・お・・はよう・・・ござ・・い・・ます・・」
全速力で駆け抜けてきた体を、膝に手をつきながら支え、息のあがった声で返す。
「何も毎朝そんなに急いで来なくてもいいんだぞ?」
「そういうわけには・・いきませんよ、牧先輩・・・。一応・・・マネージャー・・・です・・から」
少しずつ呼吸を整えながら、今度はキャプテンである牧に返答する。
そう、朝からバタバタの彼女は、王者海南大付属高校バスケ部のマネージャーなのだ。
さすが『王者』と呼ばれるだけあって、朝練を毎朝行っているのだが、理緒は朝が弱いため、いつもギリギリか少し遅刻してしまう。
それでも、マネージャー業はしっかりやるし、親しみやすいキャラクターで、可愛らしい容姿の持ち主な為、バスケ部の部員には人気があった。
「まぁ落ち着いて準備をしてくれ。よしっ、練習始めるぞ」
「「「「「はい!」」」」」
キャプテン牧の声で部員達は一斉に動き始め、理緒も急いで支度を整えるため、部室へと向かった。
控えの選手達は決まった朝練メニューをこなし、レギュラーはそれぞれ自分のメニューを決めて行う。
部員たちはとても朝とは思えない運動量をこなし、体育館は熱気に包まれていた。
「理緒、やるよ?」
「はいっ!準備OKです」
そして理緒の日課ともなっている朝の仕事は、神のシュート練習のサポートだった。
神のことを密かに想っている理緒にとっては幸せな時間である。
たとえ朝が弱くても、この時間の為に理緒は毎朝頑張っているのだ。
「次で100本目ですー」
スパッ
軽快な音をたてて、神はいつものように1本も外す事無く100本を終えた。
「ちょっと休憩しようか」
「はい!ドリンクとタオル持ってきますね」
そう言って理緒は、体育館の端の方に走って行く。
神はその姿をずっと目で追っていた。
理緒は神だけではなく、他の部員のタオルやドリンクも用意し、配っていく。
そして牧に配る時に何やら話し込んでいる様子が見えた。
「本当、俺の事・・どう思ってんだろうなぁ」
牧と話す理緒の笑顔を見ながら、神はそうつぶやいた。
―――
昼休み
「神先輩ー!」
廊下から自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、教室のドアに目を向けると、理緒が呼んでいた。
突然の理緒の姿に、驚きよりもつい笑みがこぼれてしまう。
「2年の教室まで来るなんて珍しいね。どうした?」
理緒に近づきながら問いかけると
「あのですね、今日部活が休みになったんです」
「え?」
「なんか監督が、今日は急に練習に出られなくなったらしくて・・・」
理緒にとって、部活がないこと自体はそこまで気にならないが、神との時間が減ることは確実で。
でもそのおかげで昼休みに神に会えたこともあり、少し複雑な気持ちを抱えていた。
「そうなんだ。でも俺は自主練やるからあんまり変わんないかな」
「あっ、そうですよね。でも部活がない分だけ、体力が余ってしまいますね」
「っ・・」
ふふっと笑いながら神を見る理緒があまりに可愛くて、神は一瞬言葉に詰まる。
理緒の不意打ちの可愛さに、神は何度やられたことかと小さくため息をついた。
「それでは私はこれで――」
「そうだ理緒」
「はい?」
去ろうとした理緒を呼び止める神。
「もし都合が良ければ、今日の自主練・・付き合ってくれる?」
「えっ?いいんですか?もちろん付き合います!」
神からのまさかの誘いに、理緒は嬉しそうに勢いよく返す。
その様子がおかしくて、神はつい声を出して笑ってしまった。
まったくいつから自分は、彼女をこんなに近くに置いておきたくなったのか。
「よかった。じゃあ放課後、体育館で」
「はいっ!」
手を振りながら去っていく理緒を見て、神は軽く微笑んだ。
―――
「お疲れ様です~・・ってあれ?神先輩?」
理緒が放課後体育館に行ってみると、そこに神の姿はなかった。
確かに昼休み、神と約束したはずだが・・・
「神先輩ー?まだいないのかな?」
誰もいない体育館に理緒の声だけがこだまする。
なんとなくまだ準備をする気にはなれず、体育館の端に座って神を待つことにした。
「静かだな・・ただいつもの時間に部活してないだけで、こんなに静かなんだ」
目を閉じるとバッシュのこすれる音、ボールをつく音、ボールがネットを通る音、部員たちの懸命な掛け声、牧の指示を飛ばす声、ボールを受け取る音。
全てが理緒の頭の中で記憶としてよみがえる。
その中には当然、神のシュート姿があった。
「好きだなぁ・・」
ほぼ無意識に、理緒はそうつぶやいた。
―――
「理緒?」
少し経ってから神が体育館へ入って来た。
担任に呼ばれ、来るのが遅くなってしまったため、すでにいるはずであろう理緒を探すと、
「・・・あっ、そこか・・・って寝てる??」
体育館内を見回して理緒を見つけたが、理緒は目を閉じたまま寝てしまっていた。
神は音をたてないように静かに近寄り、理緒の隣へ座る。
「まったく、よくこんなとこで・・無防備に何やってんだか」
理緒の方を向きながら神は言った。
言葉とは裏腹に、その声色は極めて優しい。
そして少し困ったような笑顔を浮かべながら
「いつも近くにいてくれて、何事にも一生懸命で・・」
理緒が起きない程度に優しく理緒の髪に触れながら、神は続ける。
「俺は・・・お前の笑顔に励まされて、元気付けられてきたんだ」
理緒の寝息がすぐ近くで聞こえた。
「俺にとって理緒は、誰よりも大切で・・」
神はその寝顔に近づき、理緒の耳元で一言
「特別な存在」
「ん~~・・・・」
理緒が少し動いた。
「起きたらあと1回だけ言ってあげる・・返事はその時聞かせてもらうよ」
伝えたあとの理緒の反応を想像するだけで、思わず笑みがこぼれる。
自分と同じ気持ちだといいのに、と軽い願望を持ちつつ、もちろん拒否権はないけどね、と小声でつぶやいて理緒を見つめる。
神は理緒の髪に触れていた手を名残惜しそうに離すと、自主練の準備を始めた。
早朝、ダッシュで道路を走り抜ける女の子が1名。
目的地は海南大付属高校体育館。
「すいません!少し遅れちゃいました!!」
ガラっと大きな音をたてて、体育館の扉を開く。
朝には不釣り合いなほどの騒々しさに、朝練をしている海南バスケ部部員が一斉に扉を見た。
「理緒、おはよう。2分前だからギリギリセーフだよ」
「神・・先輩・・・お・・はよう・・・ござ・・い・・ます・・」
全速力で駆け抜けてきた体を、膝に手をつきながら支え、息のあがった声で返す。
「何も毎朝そんなに急いで来なくてもいいんだぞ?」
「そういうわけには・・いきませんよ、牧先輩・・・。一応・・・マネージャー・・・です・・から」
少しずつ呼吸を整えながら、今度はキャプテンである牧に返答する。
そう、朝からバタバタの彼女は、王者海南大付属高校バスケ部のマネージャーなのだ。
さすが『王者』と呼ばれるだけあって、朝練を毎朝行っているのだが、理緒は朝が弱いため、いつもギリギリか少し遅刻してしまう。
それでも、マネージャー業はしっかりやるし、親しみやすいキャラクターで、可愛らしい容姿の持ち主な為、バスケ部の部員には人気があった。
「まぁ落ち着いて準備をしてくれ。よしっ、練習始めるぞ」
「「「「「はい!」」」」」
キャプテン牧の声で部員達は一斉に動き始め、理緒も急いで支度を整えるため、部室へと向かった。
控えの選手達は決まった朝練メニューをこなし、レギュラーはそれぞれ自分のメニューを決めて行う。
部員たちはとても朝とは思えない運動量をこなし、体育館は熱気に包まれていた。
「理緒、やるよ?」
「はいっ!準備OKです」
そして理緒の日課ともなっている朝の仕事は、神のシュート練習のサポートだった。
神のことを密かに想っている理緒にとっては幸せな時間である。
たとえ朝が弱くても、この時間の為に理緒は毎朝頑張っているのだ。
「次で100本目ですー」
スパッ
軽快な音をたてて、神はいつものように1本も外す事無く100本を終えた。
「ちょっと休憩しようか」
「はい!ドリンクとタオル持ってきますね」
そう言って理緒は、体育館の端の方に走って行く。
神はその姿をずっと目で追っていた。
理緒は神だけではなく、他の部員のタオルやドリンクも用意し、配っていく。
そして牧に配る時に何やら話し込んでいる様子が見えた。
「本当、俺の事・・どう思ってんだろうなぁ」
牧と話す理緒の笑顔を見ながら、神はそうつぶやいた。
―――
昼休み
「神先輩ー!」
廊下から自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、教室のドアに目を向けると、理緒が呼んでいた。
突然の理緒の姿に、驚きよりもつい笑みがこぼれてしまう。
「2年の教室まで来るなんて珍しいね。どうした?」
理緒に近づきながら問いかけると
「あのですね、今日部活が休みになったんです」
「え?」
「なんか監督が、今日は急に練習に出られなくなったらしくて・・・」
理緒にとって、部活がないこと自体はそこまで気にならないが、神との時間が減ることは確実で。
でもそのおかげで昼休みに神に会えたこともあり、少し複雑な気持ちを抱えていた。
「そうなんだ。でも俺は自主練やるからあんまり変わんないかな」
「あっ、そうですよね。でも部活がない分だけ、体力が余ってしまいますね」
「っ・・」
ふふっと笑いながら神を見る理緒があまりに可愛くて、神は一瞬言葉に詰まる。
理緒の不意打ちの可愛さに、神は何度やられたことかと小さくため息をついた。
「それでは私はこれで――」
「そうだ理緒」
「はい?」
去ろうとした理緒を呼び止める神。
「もし都合が良ければ、今日の自主練・・付き合ってくれる?」
「えっ?いいんですか?もちろん付き合います!」
神からのまさかの誘いに、理緒は嬉しそうに勢いよく返す。
その様子がおかしくて、神はつい声を出して笑ってしまった。
まったくいつから自分は、彼女をこんなに近くに置いておきたくなったのか。
「よかった。じゃあ放課後、体育館で」
「はいっ!」
手を振りながら去っていく理緒を見て、神は軽く微笑んだ。
―――
「お疲れ様です~・・ってあれ?神先輩?」
理緒が放課後体育館に行ってみると、そこに神の姿はなかった。
確かに昼休み、神と約束したはずだが・・・
「神先輩ー?まだいないのかな?」
誰もいない体育館に理緒の声だけがこだまする。
なんとなくまだ準備をする気にはなれず、体育館の端に座って神を待つことにした。
「静かだな・・ただいつもの時間に部活してないだけで、こんなに静かなんだ」
目を閉じるとバッシュのこすれる音、ボールをつく音、ボールがネットを通る音、部員たちの懸命な掛け声、牧の指示を飛ばす声、ボールを受け取る音。
全てが理緒の頭の中で記憶としてよみがえる。
その中には当然、神のシュート姿があった。
「好きだなぁ・・」
ほぼ無意識に、理緒はそうつぶやいた。
―――
「理緒?」
少し経ってから神が体育館へ入って来た。
担任に呼ばれ、来るのが遅くなってしまったため、すでにいるはずであろう理緒を探すと、
「・・・あっ、そこか・・・って寝てる??」
体育館内を見回して理緒を見つけたが、理緒は目を閉じたまま寝てしまっていた。
神は音をたてないように静かに近寄り、理緒の隣へ座る。
「まったく、よくこんなとこで・・無防備に何やってんだか」
理緒の方を向きながら神は言った。
言葉とは裏腹に、その声色は極めて優しい。
そして少し困ったような笑顔を浮かべながら
「いつも近くにいてくれて、何事にも一生懸命で・・」
理緒が起きない程度に優しく理緒の髪に触れながら、神は続ける。
「俺は・・・お前の笑顔に励まされて、元気付けられてきたんだ」
理緒の寝息がすぐ近くで聞こえた。
「俺にとって理緒は、誰よりも大切で・・」
神はその寝顔に近づき、理緒の耳元で一言
「特別な存在」
「ん~~・・・・」
理緒が少し動いた。
「起きたらあと1回だけ言ってあげる・・返事はその時聞かせてもらうよ」
伝えたあとの理緒の反応を想像するだけで、思わず笑みがこぼれる。
自分と同じ気持ちだといいのに、と軽い願望を持ちつつ、もちろん拒否権はないけどね、と小声でつぶやいて理緒を見つめる。
神は理緒の髪に触れていた手を名残惜しそうに離すと、自主練の準備を始めた。
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