Break my past.
ギシッとスプリングを軋ませる音と共にへこんだのは、ブロッケンJr.が横になっている方のベッド。
「おい!そっちのベッドからでも話すには遠くないだろう?!」
「いいじゃないか、ここのベッドはセミダブル並に広いし、ほら全然狭くない」
「一緒には寝ないからな!話が終わったら即刻向こうのベッドで寝ろ!」
「大声出すな、どっかに聞こえちまうぜ?それよりさっきの、オレなりの解釈というか回答だ。あんたがもうジェイドとベルリンで暮らせないのも、それを冷酷なまでに拒んだのも、期待を抱かせないよう留意しつつ決別したのも・・・・つまりオレの為、だろう?」
「・・・・残念だが大正解だ。満足か?」
「残念って言い方は酷いな」
ケラケラと笑うケビンをぼんやり見つめ、ブロッケンJr.は眼を閉じた。
「俺はいつもおまえに配慮してばかりだ。その元凶は毎度おまえの言動にあるというのに」
「それを言うならオレもあんたのせいで悩んだり不安になったりさせられてばかりだ」
「だから今回は何も打ち明けず英国に引っ込ませていただろうが。だのにおまえは此処まで・・・・いや、もうよそう。これまでの事はお互い様ということにして今夜は寝かせてくれ。水掛論で収拾がつかなくなるのは御免だ」
シッシッと追い払う手振りをされケビンは仕方なくもう一つのベッドへ行ったが、
「ベルリンの屋敷に着いたらあんたの寝室で一晩寝かせてもらうからな。あの広すぎるベッドなら文句ねぇだろ?」
「・・・・・・気が向いたらな。おやすみ」
「ふん、蹴飛ばされても強引に潜り込むさ。あ、おい、あんた明日の朝は何時に起きるんだ?目覚ましがまだだ」
「7時半、かな。朝食の後にチェックアウト、それからの予定は・・・・明日・・・・決め・・・・」
語尾は軽い寝息だった。
「相変わらずブロはすげぇ寝付きいいよなぁ、羨ましいぜ」
ベッドに備え付けの目覚まし時計を7時30分にセットし、部屋ごと消灯してからケビンもベッドに潜り込んだ。
なんだかんだ言い返して会話を続けたかったが、もうこの状況では仕方がない。
しかしケビンは、
《考えたことがアタリで嬉しかった。だってそうだろ?オレの為にブロはジェイドと・・・・かなり疲れただろうが奴に話して少しは肩の荷が降りたように見てとれる。今夜はオレもよく眠れるといいな》
などと、心の中で呟きながら仰向けで眠るブロッケンJr.の横顔を見つめていた。
ケビン本人は気付いていないが、その目は明日からの期待に満ちている。
ブロッケンJr.とケビンマスク。
実際、今日のことで二人の関係は着実に進展していた。