Break my past.



「どんな会話をしたんだ?」
「おまえが調べた通りの話をされた。確かに奴の心は弱りきっていたがベルリンに戻り、また共に暮らしたいと・・・・弟子としてではなくともいいと」
「弟子ではなくとも?ではどういう関係を望んでいたんだ?まさか・・・・」
「おまえと似たようなもの、と言うのが適切かもな。弟子だった時から想われていたようだ。師として気付けなかったが、思い返せば素振りはあったかも知れない」
「端から見ればバレバレな片想いだったぜ?あんたが鈍感すぎるだけだ」
「そうだな。俺は確かに鈍感だ。特にそっちの意味では・・・・だがな、ケビン。俺はそんなジェイドを冷酷にあしらった。共に暮らすことも拒絶してきた。病人相手に少し冷徹過ぎたやも知れんが、言葉を選ぶ余裕が無かったし、曖昧にして変に期待を持たせるのも酷だと・・・・何故そうしたのか、おまえ、わかるか?」
「それは・・・・風呂に入りながら考えてくる。そろそろ少しは温くなってるだろうしな」
「ゆっくり考えて一発で正解させろ。あと暫くジェイドとの接触は避けるように。おまえの名前も出されたんだ」
「わかった、そうする」

ケビンはソファから立ち上がり、バスルームへと歩いていった。

ブロッケンJr.は、ケビンの温もりが隣から感じられなくなった途端、不思議と肌寒さと寂しさを感じた。部屋は適温で自分は湯上がり、寒いわけはないというのにだ。
話は少しどころかあと僅かで終わるだろう。
冷蔵庫にビールがあるのを思い出し、缶を取り出して音を立てぬようゆっくりプルタブを開け、それを持ったまま整っている側のベッドで半身を起こした姿勢でケビンを待つことにした。

しかしケビンが戻るより早く飲み終えてしまい、証拠隠滅とばかりに缶をさっさと捨てると、途端に眠気に襲われた。ラーメンマンに気付かれたかどうかは分からないが、今日1日で約1週間の気力と体力を使い果たしたように思え・・・・そこへバスルームから髪を拭きながらケビンが出てきた。

「あんた、ビール飲んだろ?」
「飲んでいない」
「別に何か文句つけようってんじゃないから嘘つくな。匂いでわかる」
「・・・・苦手なものには鋭いな、350の缶を1本だけだ。その後にさっきの残りの水を飲んだ。一応おまえへの気遣いでな」
「そりゃあどうも。あとオレは好きな奴に対しても鋭いぞ。尤も好きなのはあんただけだが」
「俺もどうでもいい奴の為に、わざわざ臭い消しに水など飲む気遣いはしない」
「なんだ、それ。遠回しに口説いているつもりか?」
「・・・・早く髪を乾かして来い。今のは戯言だ。それより俺は眠くなった、先刻の答えを一発で当てられるまでドライヤーで頭を温めて来い」
「もういつでも正解を答えられるが、オレも寝るからすぐ乾かしてくる。このまま寝たら明日は鳥の巣みたいな頭だからな」

再び姿を消したケビンがベッドに戻るまで10分足らずだったろうか?既に寝る態勢となっていたブロッケンJr.にはその時間が遅く感じ取れた。あと5分後には寝てしまっていたかも知れない。

「ブロ、ちゃんと起きているか?まさか寝ていないよな?」
「ああ、待っていてやったさ」
「ではよく聞こえるようにここで話す・・・・失礼」




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