Break my past.
ラーメンマンがジェイドに声をかけ何か話しているようだったが、ブロッケンJr.は気にもせず玄関から外に出た。
時計を見ればジェイド宅にいた時間は1時間半ほどの間で、陽はまだ高かった。
(夕刻までの予定だったから帰りはラーメンマンと飯を食う話になっていたが・・・・夕飯には早すぎるな)
食事は明日に回し、今日はホテルに戻り、自分を待ちかねているであろうケビンマスクに話をするか、それとも遅い昼飯として約束した通り食事していくか。
ブロッケンJr.の頭の中には何故かもう背後の部屋の中にいるジェイドの存在は無かった。
そう、あるのはただ一人・・・・
「待たせてすまんな、おまえさんの尻拭いを少ししてきた」
「尻拭い?」
ようやく出てきたラーメンマンの声でブロッケンJr.は振り返る。部屋の奥にうずくまるジェイドが見えた気がしたが、位置からしてその影だろう。
車に乗り込むなり、エンジンをかけつつラーメンマンが先のブロッケンJr.の問いに答え、
「あのまま放置してわたしまで帰るのは非情すぎるだろう?ベランダに居た間にジェイドとどんな話をしていたか、大体予想はついていた。おまえが冷酷な言葉を浴びせ続けただろうことも。その証拠にジェイドは声を殺して泣いていた」
と、語尾に溜め息を滲ませた。
「あいつは昔からよく泣く。今さら涙を見せられても俺は怯まん」
「明日はどんな話をするんだ?」
「もう全て話し終えた。もう用は済んだし明日はベルリンに帰る。弟子が心配でもあるからな」
「・・・・そうか。では、あとはまた此方で引き続き彼をサポートしていく。おまえは自ら選んだ方向へ好きなように進むといい。いつか今日の日を後悔しても無駄だということを忘れてはならんぞ」
「憐れむことはあるかも知れんが、後悔などするものか」
「昔のおまえはもう少し・・・・いや、何でもない。さてこれからどうするかな。夕飯には早いが酒をちびちびやりながら日が落ちるのを待つかい?」
「そうしよう。その分ホテルにも早く戻れるし都合がいい」
「ははは、先刻の電話の相手が待っているのだろう?」
「・・・・ノーコメントだ」
走り出した車は来た道の途中で進路を変え、繁華街に近い場所へ向かっていく。
「もう少し行った所のコインパークに車を入れる。そこから店まで徒歩だ。酒は飲まないつもりでいたが、いま無性に飲みたい気分でなぁ。明日またジェイドの所へ行かねばならんし車は一晩置いておくよ。駅にも近いしな」
「俺はそんなに飲まんぞ、ビール数杯程度だ」
「ああ、おまえさんに大酒を強いるような真似はしないから安心しろ。だからちびちびと言ったろうに」
僅かに固かったラーメンマンの表情は、もう普段の彼のものに戻っており、コインパークで車を降りるなり、
「これから向かう店なんだが、きっとおまえも気に入るぞ、とにかく海鮮が美味いんだ」
と言いながら、ブロッケンJr.に満面の笑みを見せた。
