Break my past.




ここへ来るまでの道中、ブロッケンJr.も深い話は避けたがっていたことから、こんな会話は明日以降だろうと思っていた。ジェイドの方も話しにくいことは後回しにするのではないかと考えていたが・・・

(まあいいか。この調子なら話は早く進み、結論、いや、決着も早かろう)

とはいえ、今日の予定は変えない方が良さそうではある。
ブロッケンJr.はともかく、常人の何倍も大きな精神的負担を今のジェイドに課せるのはよろしくない。

ラーメンマンが沈思黙考している間、二人は押し黙ったまま互いに別々の方向を向いていた。

「ジェイド、利発なおまえなら分かるだろうが、ブロッケンも悩んだのだよ。自分が薄情すぎやしないかとわたしに相談してきた位には」
「先生・・・・」
「決めたことを貫きたければ、その気持ちが揺らがぬよう手紙は読まない方が良い、とアドバイスしたのもわたしだ。ブロッケンは若い頃から情に厚すぎるからな、すぐ絆されてしまうのだよ。そして自分の意思を自分で曲げてしまう・・・・父親の仇であるわたしを赦した前例が良い証拠だろう?」
「・・・・・・・・はい」
「おまえさんの為を思い、涙しつつ決別したのは、いわば親心のようなものだ。責めたい気持ちは分かるが、ブロッケンの心情も・・・・・、ん?」

「失礼、俺の電話のバイブ音だ」

ブロッケンJr.は服の内ポケットから出した携帯電話の画面を見、すぐにバイブを止めてラーメンマンを見た。

「少し席を外してもいいか?」
「ああ」
「すまんな」




ドアの外に出たブロッケンJr.は、その通路ではなくマンションから少し離れた場所まで行き着信履歴を見た。
日本に着いてから実は3回目の電話、意図的に無視していたが相手は同じ人物である。
画面に並ぶ【Kevin】という名は、紛れもなくケビンマスク。

「あいつめ、暫く電話するなと言っておいたにも関わらず・・・」

やれやれ、と呟き、ブロッケンJr.は面倒臭げにリダイヤルボタンを押した。


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