Break my past.
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予定通りの便で日本・成田空港に降り立ったブロッケンJr.は、先ず都心へ向かった。
ジェイドの居場所について詳しくは知らないが、どの辺りかは大体見当がつき、宿泊するホテルは出発前の空港で既に予約を入れてある。
案内兼同行者との待ち合わせ場所にも近く、先にホテルにチェックインし荷物を置いてから向かっても約束の時間に充分間に合うだろう。
ベルリンから持ってきた荷物の大半はジェイドの着替えや日用品。
ケビンが偽弟子として住み着いた時、こっそり超人委員会へ身の回り品は送っていたが、私物はまだ少し屋敷に残っている。
いずれ彼の定住先が決まったなら、ブロッケンJr.は折を見て家具も送るつもりだ。
決して彼を迎えに来たわけではないのだから。
もう師匠と弟子には戻れない。例えジェイドが望んだとしても共に暮らすことすらブロッケンJr.自身が無理だった。
彼はもう自分の元から巣立ったのだから戻るべきではない。
それに・・・今ではケビンが傍らに居ることが当然のようになり。いざこざは日常茶飯事でも献身的に自分を愛し、支えようとしてくれている。
そろそろ彼の想いに応えるべきかどうか暇さえあれば考えてしまう。それに比べてジェイドについて思考する時間はとても短く決断も早い。
(まさかこの歳で色恋沙汰に重きを置くとは・・・・ケビンに洗脳されたのかもな)
列車の中だというのに思わず笑いそうになり、ブロッケンJr.は慌てて帽子を目深に被った。