FAKE 1



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ブロッケンジュニアは疲れ切っていた。


無実の者が囚われ、重い責め苦を受け続け、苦しみから解放されたいが為にやってもいない罪を「自分がやった」と言ってしまう・・・その心理が少しわかる気がした。
いまだ頑とした態度を貫いているが、いつまでもつだろうかと正直不安になり始めている。

さっさと帰れ!と叩き出し、二度と来るな!と怒鳴り、固くドアを閉ざすことが出来るような仲ではないだけに拷問に近い。

思うに。
長く平和を甘受しすぎたが為、突然の悪行超人の来襲に歴戦の正義超人達が敵わなかった、というのはまだ記憶に新しい。
何よりこの三人も歯が立たなかったのだ。老いたとはいえ生徒をしごく姿は現役さながらだというのに。
再び同じことが、いや、更なる強敵が出現するやも知れぬと危惧する気持ちも理解は出来る。

かつて厳しい戦いを何年も共にした仲間達は、もはや実戦は無理だとして育成に関わることで正義超人としての大義を果たし続けている。
それに加わることを拒む自分は、不義を犯すも同然ではないか。
3対1の図もそんな思いに拍車をかける・・・

ジュニアは返す言葉も少なくなっていた。
陥落してしまうのも時間の問題、というべきか。

「な?いい案だろう?お試し期間だ。きっとおまえなら何かしらやりがいを見出だせるって」

浴びるようにワインを飲み続けいても、バッファローマンの呂律はよく回る。

「試すも何も・・・、一晩で何を決められるというんだ」

吐き捨てるようにジュニアが呟くと、ラーメンマンが宥めるように頷いてみせる。

「確かにそうだ。突然でおまえには申し訳ないが、私達がこうして揃ってここへ来る機会は暫くない。これから次の…3期生の選考で忙しくなるのだよ」

「まさか、それを俺にも手伝えというのか?今日の今日にも旅支度をしろと言わんばかりだな」

「ジュニア、何故そこまでここでの生活に拘るんだ?特別な何か・・・どうしても動けない理由でもあるのか?」

え?とジュニアは言葉に詰まる。
咄嗟に浮かんだのはケビンの事だったからだ。
昨夜、行かないと断言したが、ケビンが何故こんなに枷になっているのかジュニア自身、どうしてなのか判らない。
あの寂しげな眼差しと、辛さを隠しながらの笑みまでもが脳裏に浮かび・・・しかし慌てて掻き消した。
何にせよケビンのケの字も彼等に言えるわけがない。

「理由次第では、我々は引かざるを得ないが、話せないようなことか?」

ラーメンマンの瞳が薄く開く。
何か見透かされてはいないだろうかと、ジュニアの額に汗が滲む。
見透かされて困ることがあるという、この不本意な事実に内心たじろぎ言葉が出ない。

「誰も口外しない。さわりだけでも話してくれないか」

「り、理由、は・・・」

適当な何かを探しながらジュニアはとりあえず口を開く。
なにか。なにか…と思考をフル回転させても、ケビン以外に何も出てこない。
額の汗が一筋、頬をつたう。
もう観念する、という選択肢がケビンやその他を押し退け、一番手前にやってきた。



―――と、そのとき。

リビングのドアが勢いよく開いた。



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