FAKE 1




「数年でいい、頼む」

ラーメンマンには弱いジュニアは、更なる言葉を探しながら手にしていた茶器に視線を落とす。
これもケビンが買ってきたもの…

本当に自分の意思から行きたくはない、無理だ、と言ってはいても、ふと考える。
この誘いに乗ればケビンと少し離れ、彼との関係を落ち着いて考えることが出来る。
もしかすればその間に、若く見目も良いケビンだからこそ誰かから告白を受ける可能性も無くはない。逆もあり得ない話ではなく、自ら普通に女性と出会い恋をするかも知れないのだ。
どう転んでもケビンの為にはなりそうだ、と思う。

しかし。

ジュニアは昨夜、ベッドでこの話をした時のケビンの表情や言葉を思い出し、また胸がちくりと痛んだ。

その痛みを認めれば認めるほど、何かを思い知らされていくような気がした。
もうただの超人同士、普通の男同士といえる関係ではない、と、漠然とだがジュニアは思う。
交わしたのは挨拶でするようなキスではなく、絆された成り行き上とはいえ、ジュニア自身からケビンを抱き締めて眠った。
その眠りが意外なほどに心地好かったことも認めねばならない。当然それらは決して嫌ではなく、自分が正気でしたことだ。

この普通とは違う奇妙な(※ジュニアにとっては)関係を、何でもないような日常に加えてしまっている自分がいる。
かつては戦いに明け暮れ、弟子まで育てた超人とはいえ、人生も後半に差し掛かり、ひっそりと生きていきたいと思った矢先、ケビンが現れた。
以来、ジュニアはケビンに振り回されつつある。
だが、それも不快ではなく、むしろ…

(俺は何を考えているんだ?こんな時に)


口々に説得の言葉をかけられながらも、ジュニアは何も聞こえていないかの如く瞑目していた。



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